2016-08-16
acid android、THE NOVEMBERSとのコラボイベントで圧巻のライブを披露
acid androidとTHE NOVEMBERSのコラボ・イベント『acid android in an alcove vol.8 × THE NOVEMBERS PRESENTS 首』が、去る8月11日に川崎CLUB CITTA'で行なわれた。
2年前にも共演経験のある両者だが、今回のイベントは単なる対バンにとどまらない盛りだくさんな内容となった。そのキーワードとなるのが「デペッシュ・モード」である。80年代英国のニュー・ウェイヴ・ムーヴメントから生まれ、現在ではイギリスのみならずヨーロッパを代表するロック・バンドとなったデペッシュは、テクノやオルタナティヴ、インダストリアルなど後進に大きな影響を与えた偉大なバンドであり、また「なかなか来日してくれない大物」のひとつでもある。acid androidのyukihiroもまたデペッシュに深い影響を受けている。『サウンド&レコーディング・マガジン』でyukihiroが電気グルーヴの石野卓球と対談したおり、デペッシュの話題で盛り上がり、ヨーロッパでは大きな規模で行なわれている、デペッシュしかかからないDJイベント「デペッシュ・モード・ナイト」を日本でもやりたいと考えたのが、今回のイベントのきっかけとなったという。acid android、THE NOVEMBERSに加え、yukihiroの尊敬するギタリストであり、THE NOVEMBERSのプロデューサーでもある土屋昌巳をゲストに迎えたこの日限りのスペシャル・セッションでデペッシュをカヴァー、さらには石野卓球もDJで参加。これまでの「alcove」や「首」とはひと味違うイベントとなったのである。
まずはTHE NOVEMBERSが登場。長い金髪を切り、まるで別人のような好青年風に変身した小林祐介(VO,G)にまずは驚かされるが、当初いささか緊張気味にも見えた演奏は、いつも以上に気合いのこもった力演で圧倒された。最近はライヴごとに必ず未発表の新曲をやることを自らに課しているという事で、新曲2曲を含む内容は美しく激しくドラマティックで、彼らが英国のダーク・サイケデリックなニュー・ウェイヴの正統な後継者である(私にとっては、ですが)ことを印象づけた。そして事前の予告通り、L'Arc~en~Cielのyukihiro楽曲「cradle」の秀逸なカヴァーを披露。特にL'Arc~en~Cielに大きな影響を受けたという小林と高松浩史(b)にとっては、感慨深い夜になったに違いない。9月21日にリリースされるニュー・アルバム『Hallelujah』も楽しみだ。
続いてはacid androidが登場。6月の渋谷duo MUSIC EXCHANGEでのワンマン・ライヴに続いて見ることができたが、この日はギターをTHE NOVEMBERSの小林祐介が担当。ドラムスに山口大吾、yukihiroはハンドマイクを持ちフロントに立って、新曲3曲を含む全11曲を披露した。
内容はここのところのacid androidの基本線であるダークなエレクトロ。デペッシュ・モードに通じるとも言えそうだが、この日特に感じたのは、yukihiroのストイックなまでに厳しい表現者としてのありようだ。映像も使わず、照明と音響だけで己のダークな世界観を徹底的に描き尽くす。PAのバランスはyukihiroのヴォーカルを際立たせるというより、シンセ・ベースのブルブルするような重低音を効かせたダンサブルなサウンドの全体像を強烈な音圧で聞かせる。歌や演奏や歌詞などの些末よりも、サウンド全体を体感してくれというyukihiroの意思を感じた。美しい音楽ではあるが、J-POP的な意味でのポップではない。耳触りのいいメロディやキャッチーなフレーズ、共感を誘う歌詞、親しみを持たせるMCといった、聴き手へのサービスが一切ない。だから今この瞬間、yukihiroが本当にやりたいことだけが、一切の迂回も妥協も薄められることもなくダイレクトにオーディエンスの全身を直撃してくるのだ。身の引き締まるような密度の濃い時間だった。
演奏終了後、即座に石野卓球のDJがスタート。大傑作ソロ『LUNATIQUE』をリリースしたばかりということで、彼らしいテクノ・セットにデペッシュ・モードの曲が挟まれるような内容になるかと思っていたら、全編ほぼデペッシュの楽曲のみで構成された「デペッシュ縛りDJ」だったのは驚かされた。しかし、これが素晴らしい。溢れんばかりのデペッシュ愛と、熟達のDJプレイが理想的に合致した、まさにプロフェッショナルなプレイ。有名無名を問わないデペッシュの楽曲群が自由自在にカットアップ・エディット・MIXされ、とてつもなく刺激的なグルーヴを生み出す。ここにこの曲をこういう形でぶっ込んでくるか!という驚きで、お馴染みの楽曲も新鮮に聞こえる。プレイする石野自身も楽しそうで、約1時間半のセットはあっという間だった。なんでも当日の明け方、デペッシュ縛りにしようと突然決めたらしいが、大した事前の仕込みもなくあのプレイとは、さすが日本を代表するDJである。会場ではデペッシュ・モードのファンも少なからず参集していたように見受けられたが、彼らも満足できたのではないだろうか。
石野のプレイでフロアが最高に温まったところで、いよいよこの日の目玉デペッシュ・モード・スペシャルセッションの登場。土屋(g)、KENT(vo/Lillies and Remains)と、高松(b)、TOM(key/PLASTICZOOMS)、yukihiro(dr)、という豪華メンバーだ。
まず驚かされたのがKENTの声。声も歌い方もデペッシュ・モードのヴォーカル、デイヴ・ガーンにそっくりだ。もちろん意識して近づけようとしているのかもしれないが、このヴォーカルがあるから、耳慣れたデペッシュの楽曲にすんなり入っていける。ディペッシュ・モードの音楽には欠かせないシンセで参加したTOMはシーケンスに自身の音を重ねていきながら、KENTと息の合ったコーラスワークも見せてくれた。そしてデペッシュと違いシンセ・ベースを使わず高松の手弾きのベースがあるだけで、ロック・バンド感がぐっと増す。yukihiroの正確かつダイナミックなプレイとのコンビネーションで、デペッシュのダークで重厚でヨーロッパ的な耽美性を感じさせる楽曲に、オーガニックでフィジカルな力強さとわずかな汗臭さ、(良い意味での)泥臭さが加わった。そこで存在感を感じさせるのが土屋のギターだ。要所で効果的なギター・ソロが差し込まれ、デペッシュとは違う味を出す。名曲「パーソナル・ジーザス」でのプレイは、ちょっとピンク・フロイドのデイヴ・ギルモアを思わせるブルージーなもので、そうかデペッシュ・モードはブルースでもあるのかと、その解釈の目新しさに感心させられた。
演奏曲は(たったの)5曲。だが単なるコピーやカヴァーの域を超えたオリジナリティの誕生を感じさせる充実の内容だった。次が最後の曲であることがKENTから告げられると、フロアからは軽い抗議の声があがっていたが、たぶん(根拠はないが)、これが最後の一回限りとは思えない。きっと、また新たな機会があるに違いないし、それを期待したい。
そしてバンド演奏もDJも等しく楽しめ、さまざまなタイプのリスナーが集まったこの日の催しは、その幅広さと懐の深さ、演奏の充実で、よくあるアーティスト主導企画イベントとは違う可能性があることを示していたと思う。
Text by 野島大 / dai onojima
Photo by 岡田貴之 / takayuki okada
■【セットリスト】
■THE NOVEMBERS
1 New Song1
2 きれいな海へ
3 New Song2
4 236745981
5 cradle(L'Arc-en-Ciel Cover)
6 鉄の夢
7 Blood Music.1985
8 黒い虹
9 Romancé
■acid android
1 intertwine
2 daze
3 gamble
4 double dare
5 new song #1
6 unsaid
7 new song #2
8 swallowtail
9 violator
10 the end of sequence code
11 new song #3
■special session
(Depeche Mode cover)
1 Never Let Me Down Again
2 Enjoy The Silence
3 Behind the Wheel
4 Personal Jesus
5 Walking In My Shoes
<session member>
g: 土屋昌⺒ vo: KENT(Lillies and Remains) b: 高松浩史(THE NOVEMBERS) key:TOM(PLASTICZOOMS) dr: yukihiro
■【ライブ情報/acid android】
「acid android live 2016 #3」
8月19日(金) 大阪 BIG CAT
「acid android live 2016 #4」
10月27日(木) 名古屋CLUB QUATTRO
10月31日(月) 恵比寿LIQUIDROOM
11月01日(火) 恵比寿LIQUIDROOM
■【ライブ情報/THE NOVEMBERS】
「THE NOVEMBERS presents 首 vol.13 – Redder Than Red -」
9月11日(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
共演:The Birthday
「11th Anniversary & 6th Album Release Tour - Hallelujah –」
9月30日(金) 大阪・心斎橋JANUS
10月02日(日) 愛知・池下CLUB UPSET
10月04日(火) 石川・金沢van van V4
10月06日(木) 新潟・GOLDEN PIGS BLACK STAGE
10月13日(木) 宮城・仙台enn 2nd
10月23日(日) 栃木・宇都宮HEAVENS ROCK VJ-2
「11th Anniversary & 6th Album Release Live 「Hallelujah」」
11月11日(金) 東京・新木場STUDIO COAST
【関連リンク】
acid android オフィシャルHP
THE NOVEMBERSがacid androidとの共同企画にてL'Arc〜en〜Cielの「cradle」カバーを発表
acid android、10月に東京・名古屋で新たなライブを開催
acid android、ワンマン2公演で魅せた濃密な音世界とは
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