2014-01-20
【BLOOD STAIN CHILD】BSCの今できることが全て詰まっている
メタルとトランスを融合させた個性的な音楽性を貫いてきたBLOOD STAIN CHILDが、あのランティスに移籍してのニューシングル「AST STARDUST」を発表。GRANRODEOのe-ZUKAがギターソロで客演したのも話題だ。
【ここで一番いいと思える、カッコ良い曲を出さなきゃいけない】
──まず、BLOOD STAIN CHILD(以下、BSC)はどんなバンドなのか、自分たちの言葉で説明するとしたら?
RYU「まず音楽性の基盤はラウドなメタルサウンドなんですけど、初期からトランス、アンビエント、EDMの要素を採り入れていて、常に新しいものを作ろうという姿勢ではやってきましたね。さらに言えば、新たに入ったKiKiのさわやかな声質がBSCの音楽性にマッチしていて、3rdアルバムまでメインヴォーカルをとっていたRYOのスクリームとの絡みも含めて、これからもっと面白く工夫していけるんじゃないかなと思うんですよ。それから今までもアートワークであったり、ビジュアル面を含めて、エンターテインメント性も重要視してきましたけど、VJのMAKOTOが入ったことで、今後のライヴにおいては、映像と音楽の融合という面でもいろんな可能性があると思うんですね。」
KiKi「私はもともとシンガーソングライターとしてソロ活動をしていたんですけど、加入する前から純粋にBSCが好きで、ライヴも観に行ってたんですね。もちろん、メタルの要素もあるんですけど、メロディーや歌詞の世界とか、激しい中にあるエモーショナルで繊細な部分にもすごく惹かれてたんですよ。」
MAKOTO「僕は好き嫌いはなくて、メタルはメタルで聴いていて楽しいなと思ってたんですけど、BSCの場合、音楽と映像のそれぞれの緩急が結び付いた時に、視覚的にすごいものが生まれるとは思うんですね。」
RYO「人それぞれ捉え方はあると思うんですが、僕は昔からデスメタルへの思い入れはずっとあるんですね。やっぱりBSCはそこから始まってますし、たとえトランス要素が入ろうが、VJが入ろうが、デスメタルに変わりはない。どんどんいい方向に進化していっていると思いますし、だからこそ刺激があって、やっていて飽きないんですよ。」
──核となる部分がある中で、さまざまな変容を伴いながら、BSCの色は明確に押し出されてきましたもんね。
GAMI「一般的にメタルって好きな人は好きという世界だと思いますし、僕もコテコテのものは昔から好きなんですけど、逆に“えっ!?”と苦手意識を感じる人にも、BSCは受け入れられるバンドかなと思うんですよ。」
G.S.R「そうですね。僕ももともとヘヴィな音楽はかじる程度しか聴いてなくて、そこまで大好きなジャンルではなかったんですよ。でも、BSCを初めて聴いた時に、すんなりと受け入れられて、いいなと思えたんですよね。だからこそ、このミュージックシーンをいろいろと巻き込んでいけたらなとも思ってますし、このメンバーやったら、それを実現させる可能性もあるんじゃないかなと思うんですよ。」
──今回からGRANRODEO等々が所属するランティスと契約しましたよね。これも大きな話題のひとつですが、どういった経緯で決まったのですか?
RYU「僕自身、ずっとライヴにも通っているぐらい、GRANRODEOの大ファンなんですよ。そこで以前、会場に置いてあるプレゼントボックスに、BSCの前のアルバム(『epsilon』/2011年)を入れたんです。そしたら、その日のうちにKISHOWさん(Vo)がツイッターで、“(ヘヴィメタル専門誌の)『BURRN!』でも高得点を採っているすごいバンドだ”みたいなツイートをしてくださったんですよ。ちゃんとおふたりが聴いてくれたことにびっくりしたんですけど、e-ZUKAさん(Gu)のホームページからダイレクトにお礼のメールをしたんです。そこから…e-ZUKAさん的に言うと“調子に乗って”(笑)、新曲(「LAST STARDUST」)でギターソロを弾いていただけないですかって話を持っていったところ、快諾していただいたんですね。もうその時は興奮して、信じられない状況だったんですけど、そこからさらに調子に乗りまして(笑)、“レーベルを探しているんですが、僕たちもランティスでお世話になれないですかね”ってe-ZUKAさんに相談したら、話をつないでいただける感じになったんですよ。そこからですね。そこで1年ぐらい前にランティスに乗り込んで、熱い思いをぶつけてみたところ、音楽性も含めて、BSCを気に入っていただいて。ランティスというとアニメに特化したレーベルというイメージもあったんですけど、ラウド系に詳しいスタッフもいらっしゃったりして、すごく嬉しかったんですよ。今はメンバーとも一丸となって、団結してる感じがすごくありますね。」
──なるほど。「LAST STARDUST」は現ラインナップでの初音源であると同時に移籍第一弾シングルとなりますが、これはPCゲーム『未来戦姫スレイブニル』のオープニング曲として書き下ろされたものなんですよね?
RYU「そうなんです。ランティスと契約する前にレコーディングまで全て終わっていたんですが、ゲームのタイアップというのはBSCとしては初だったので、ここで一番いいと思える、カッコ良い曲を出さなきゃいけないなという思いはありました。その結果、BSCでも最も気に入ってる曲になりましたね。サイバーでトランス的なシンセ、疾走感、スクリームとクリーンヴォイス。BSCの今できることが全てが詰まっている曲なんじゃないかなという気がします。歌詞に関しては、ある程度、ゲームのプロットとかをいただいていたので、そういう雰囲気に合うようには書きましたね。」
──この曲が嫌いだったら、BSCの世界には入り込めないだろうなとも思えてきますよね(笑)。
RYO「今回の「LAST STARDUST」に関しては、楽器的な意味合いで言えば、ドラムとベースはグルーブ感重視で、ライヴとかではノリやすい曲やなと思いましたね。最初に聴いた時は、“どこにシャウトを入れるんやろう?”というのはちょっとありましたけど(笑)、上手いこと入ってきましたし。胸を張って出せる曲やと思います。」
GAMI「ドラム的なことで言えば、意外と派手な感じには仕上がってて。今まではレコーディングの時はデモに忠実にいく感じで、自分でそこまでフレーズを考えたりしなかったんですよ。だけど、今回はいろいろ変えてみたりして…自然にそうしたくなるような曲だったということなのかな。やりたかった感じの曲に出会えたみたいな。」
G.S.R「でも、レコーディングの時も感じたんですけど、とにかく速いっすね(笑)。実際に聴いてみると、クリーンヴォーカルとかも入ったりして、そこまでは感じないんですけど、この曲のプロモーションビデオの撮影の時にGAMIくんがドラムを叩いているのを観た時には、やっぱり速いなって(笑)。でもね、音楽的な部分でも『epsilon』から一段階グンとパワーアップしてる。その進化はすごく感じられると思いますし、今のBSCを象徴する曲でもあると思うんですよ。」
MAKOTO「僕が入った時には、もう出来上がってたんですが(笑)、聴いたそのままのカッコ良さがありますね。」
KiKi「歌詞の世界はゲームに合わせてという話がありましたけど、自分が思っているよりもグッと感情が入ってくるんですね。プロモーションビデオの撮影で、自分が歌っている姿を見て気付いたんですが、実際にすごい表情で歌ってるんですよ(笑)。自然と感情移入できるんですね。」
【イメージは『シティハンター』のエンディング】
──歌詞そのものも普遍的なテーマに置き換えられる内容ですしね。カップリング曲の「OVER THE GALAXY」は同ゲームのエンディングテーマになっているんですよね。
RYU「そうですね。まずイントロは、TM NETWORKの「Get Wild」的なイメージにしたいなと思ったんですよ。というのは…『シティハンター』のエンディングなんですけど、あのTVアニメは最後に物語が終わって、まだ冴羽?の声が乗っている時に、タンタンタンって「Get Wild」が流れてくるんですね。だから、この曲もゲームが終わって、エンディングに入るか入らないかのところで、テンテンテンって始まるようにしようと(笑)。その辺も上手くできたかなぁと思いますね。」
──こだわりの聴かせ方ですね(笑)。
RYU「はい(笑)。小室哲哉大先生も大好きですからね。シンセのAKIは今後、制作のみという活動にはなっているんですけど、彼もTM NETWORKは大好きなんで、そこは細かく説明しなくても理解してくれたんですよ。曲そのものに関して言えば、エンディングテーマって、ゆっくりな曲とかちょっと静かめの曲が多いじゃないですか。実際にそういった曲も書いてはみたんですが、新しいことをやっていくのがBSCなので、最後も盛り上がって終われる、明るい、ノレる曲にしたいなと思ってこれを選んだんですよ。」
──サビの切ないメロディーラインは特に印象的ですが、ライヴの場ではともに歌えるような曲ではありますね。
RYU「できれば、みんなで盛り上がって…これは言っていいのかどうか分からないけど、ライヴをきっちり締めるみたいな曲にできればいいなと(笑)。」
KiKi「私はこの曲のふたりのギターソロの部分が大好きなんですよ、泣けるメロディーが。そういったところがありつつ、みんなで歌えて、グッと掴める。ライヴに限ったことではなくて、“また会おうよ、一緒に楽しもうよ”みたいな…変な言い方ですけど(笑)、そういう感じがあるんですよね。」
RYO「トランス要素は母体としてあるけど、縦ノリ系というか、「LAST STARDUST」とは系統が違う曲ですね。この曲に関してはあまり僕はシャウトを入れてないですけど、やっぱりお客さんと一緒にバーっとなってほしいなというのはその(クワイア)場面であったりする。しっとりと聴く人もおれば、ジャンプする人もおれば、といういろんな人がいる光景が見えてきますけど、観せ場という意味では、「LAST STARDUST」よりも分かりやすいと思いますね。」
G.S.R「意図的なのか結果的なのか分からないですけど、KiKiの声に一番合ってるのかなぁって思うんですよ。ライヴとかでは以前のアルバムの曲も歌ってるんですけど、彼女のヴォーカルの美味しい部分がすごく出たんじゃないかな。」
──とすると、メンバー自身も今まで知らなかった彼女の魅力に気付く面もあるわけですね。
G.S.R「そうですね。KiKiがどういうヴォーカルなのかと訊かれたら、この「OVER THE GALAXY」を聴くのが最も分かりやすいんじゃないかなって。」
GAMI「リズム的なことで言えば、ハットが裏に入ってくる曲が『epsilon』ぐらいから結構増えてきたんですよ。そこは疾走曲と並ぶもう一本の柱みたいな売りにしていければなと思うんですけど、その合間合間にメタルをキュッと詰め込んだ感じになってるかなと思います。」
MAKOTO「僕はこの曲も「LAST STARDUST」と同じ頃に聴いたんですけど、ライヴの時は、この疾走感に合うような映像を選んで魅せられたらなと思います。」
──もう1曲の「STARGAZER -X-」はリレコーディング・バージョンですが、なぜ改めて採り上げたんでしょう? 『epsilon』の収録曲ですよね。
RYU「すごい人気曲なんですよ。“スタゲ”という愛称で呼ばれてるぐらい(笑)。それとこれはあとから付けたような感じにはなるんですけど、ゲームの制作会社が“スターゲイザー”って名前なので、その意味でも合うかなと(笑)。」
──新編成でのライヴでも披露済みの曲ですよね。
KiKi「そうですね。いろんな聴きどころがあると思うんですけど、私の中では…これは意識した部分でもあるんですけど、今まで歌ってきた「STARGAZER」よりも、もっともっと感情、この曲の世界が伝えられていると思います。」
RYU「リメイクというとオリジナルのほうが好きだとか、オリジナルを超えられないパターンが結構多かったりもするかもしれないですけど、今回はこれまでの「STARGAZER」を遥かに超えましたね。AKIのアレンジにしても、KiKiの声にしても、サウンドプロダクションにしても、全部が上回っていて、100パーセント満足してますね。」
──今回の音源はデンマークのヤコブ・ハンセンがミックスを担当していますが、それはどういった理由で?
RYU「彼もいろんなメタルバンドを手掛けているじゃないですか。その中で、これはイケるんじゃないかと思ったのは、スウェーデンのAMARANTHEの音源だったんですよ。あのバンドも女性ヴォーカル、スクリーム、そしてちょっとデジタルな音が入っていて、BSCに近いかもしれないし、彼に任せたら間違った作品は上がってこないだろうと。依頼のメールした時には、素晴らしいバンドだからぜひやらせてほしいと即答で返ってきたんですけど、大正解でしたね、北欧人ならではの細かさとかもあって。今までいろんな外国人のエンジニアさんとやってきましたけど、終着点というより、これが求めていたものだというのはすごく感じてます。彼とだったら、ずっとこの先も仕事をしていきたいですね。」
──さて、国内のみならずライヴを行ってきたBSCですが、本作発表後のステージも楽しみになりますね。
RYO「音源も大切だけど、やっぱりステージが一番の観せ場ですからね。こういう感情爆発的な音楽は、ライヴでこそ最も発揮できると思うし。一度、体感してほしいですね。」
KiKi「日に日にバンド自体がパワーアップしているのを感じますし、それは今のBSCの象徴という気もするんですね。実際にみんなにどう聴こえるかは分からないけど、想像以上の気持ちと歌が伝えられるんじゃないかなと思ってます。」
取材:土屋京輔
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