未だに暁を覚えずに微睡みの中
ぽつりぽつりがしとしとへ移ろう虚ろ
褪せ行く時の中 ただ立ち止まり蹲る
眼裏の冷たい闇は優しい嘘
生きず死なず 彷徨うでもなく
漂う稀薄 此処に在らず 何処 其処 彼処
生きるままに死殻となるか
其の滓を焼べ 死しても生き 嘘を喰らうか
己が心の内 撫で回すのは
救いを着飾りて巣食う己が餓鬼
群がり祀り上げ貪り尽くされるだけ
此れは「夢」か「現」か…
御覧遊ばせ
死出の旅へ 其の背を押すのは
共に散り行く薄紅色 数多の命
志せば纏わり付くのは落葉の蜜
私語を掻き消したざわめき
音も無く散る命飾る音
声無き雨の唄 弔いの餞として
喰らい飲み込む優しい嘘
今宵もまた朧に隠れて毟り取られる
其の腕を払えぬ脆弱
生きぬままに死に様を選ぶ 晒すは不様
目擦れど暁は遠く
痛みに咽び泣いて喘ぎ置き去りにされ
過ぎ去りし遥か彼方
紛い物の優しさが瞼を落とす
冷たい眠りへ誘う
「春時雨」 

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