2017-10-05
INORAN、自身の誕生日にツアーファイナルを迎える
ソロデビュー20周年を祝し、大胆なリアレンジを施したセルフカバーアルバム『INTENSE/MELLOW』をリリースしたINORAN。それに伴い、『INORAN SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 -INTENSE/MELLOW⁻』と題した全国ツアーを約1か月にわたり実施。9月29日(金)はその最終日にして、毎年恒例のバースデー公演でもあった。LUNA SEAメンバーのソロ活動を見渡しても、始動時と現在とを比べてもっとも大きな変化を感じるのはINORANで、だからこそ楽曲のリアレンジ、アプローチも声量も変わった歌唱の進化も味わい深く楽しい。しかし実は、根底にある熱さ、挑戦心、不器用なまでの真っ直ぐさはずっと不変だったのではないか? そんな問い掛けが脳裏をよぎる濃密な2時間だった。
会場は新木場STUDIO COAST。フロア上方では大きなミラーボールが存在感を示し、開演が近付くにつれ、ステージ上には少しずつキャンドルの灯りが増えていく。自然と手拍子は大きくなって、BGMに乗せてメンバーが登場。INORANは指でフロアを指し示しながら姿を現し、ギターを受け取った。硬く強い音色でコードを一人奏で始め、Ryo Yamagataのドラム、続いてu:zoのベース、Yukio Murataのギターが加わっていく。INORANが左脚をクイッと上げた瞬間、曲調が激しく変化。「Come Away With Me」に歌はなく、4人の放つ音と音とが対話するように重なり合って重厚なグルーヴを生み出し、熱はいやおうなしに高まっていく。「用意はいいか?」(INORAN)の掛け声に続き、「Spirit」へ。例えばこの曲は2001年リリースのAL『Fragment』に収録されている初期曲だが、大胆な変貌を遂げて『INTENSE』に収められていて、一聴すると新曲かと思わされてしまうほど。赤、青といった原色のライトが明滅する中、アッパーに攻め、畳み掛けていく。「Get a feeling」は熱い演奏の中でも落ち着いた歌を聴かせ、一瞬の暗転の後、「grace and glory」を披露。このライヴはライティングが全般的に美しく、空間を鮮やかに彩っていたのも印象深かったことの一つ。この曲では、アンプやドラム台に白く光る電飾を伝わせていて、パープルとグリーンのライの中美しく際立っていた。合の手を入れるように拳を突き上げて歌う観客とINORAN、バンドの呼吸もすべて合っていて、終盤を迎える頃にはステージとフロアが密な一体感で結ばれていた。
「Hey hey、Tokyo! 会いたかったです。 ぎょうさんおるなぁ。盛り上がっていくぜ! 行けるか!」(INORAN)と叫ぶと、「Awaking in myself」へ。後光のような幾多のライトを浴びながら歌い出したのは、美しく清らかなメロディー。演奏は激しく強く、情熱的に昂っていく。INORANもフロアもジャンプを繰り返し、音に身を委ねていた。ずっしりとした重量感と粘り気のあるグルーヴが心地よい「2Lime s」では、ネックをスライドさせて鳴らす譜面化できない音色に、色気が滲む。Murataが弓を駆使してプレイする前衛的なギターソロは枠にハマらない愉しさがあり、ワクワクとさせられた。「Daylight」、そして「千年花」も『INTENSE/MELLOW』でセルフカバーした新たなヴァージョンで披露。情緒的なメロディーは変わらぬままに、轟々と唸るようなヘヴィーなアンサンブルに、時を経て育まれたたくましさ、INORANの内的変化を感じた。「Shine for me tonight」ではアコースティック・ギターを奏でながら、凛とした歌声を響かせる。しっとりとした余韻を残して曲を終えると、キャンドルが揺らめく暗闇の中、大きな拍手が沸き起こった。
BGMに乗せ椅子や譜面台が運び込まれセットチェンジ。4人が位置に就くと、「Bar Mellowへようこそ!」とINORAN。ツアーの見どころとなっていたアンプラグド・セッションコーナーで、リラックスしたムードの中、まずは「no options」を披露した。観客の手拍子もリズムに組み込みながら、まさにステージとフロアが分け隔てなく一体となって音楽を奏でていた。INORANはギターのボディーの上で両腕を重ね合わせるようなラフな体勢で歌ったかと思えば、歯切れのよいカッティングを刻み始める。フロア上方には2つのシャンデリアが高い位置で輝いていて、まるでパーティーに招かれたような華やぎを醸し出していた。ギターを爪弾きながらのMCでは、「お酒飲んでますか? 今日の東京は和やかですね~。男いますか? なんでそんな後ろにいるんですか? 恥ずかしがり屋さんなんですか? 後で期待しちゃいますよ?」「美人さんが多いですね。僕は美人さんがクシャッてした顔が大好きです。後で期待しちゃいますよ?」などと軽妙なトークで笑わせ場を和ませると、「Sakura」へ。マラカスでRyo Yamagataが刻み始めたリズムにMurataのアルペジオが重なり、INORANはバッキング・コードを爪弾く。淡いトーンのライトが織り成す光景は、繊細なアンサンブルが生み出す儚げな美しさと相まって、五感に刻まれる思い出となった。時折鳴らされるウインドチャイムの音色はまるで星の瞬きのようにロマンティックで、夢見心地へと誘われた。Bar Mellowの試みについて、「どこかでまたできればいいね」とINORAN。約5年の活動を共にして来たバンドメンバーだが、「こういうの初めて。すごい新鮮」だと手応えを感じている様子。「こういう場を見せてくれた皆に感謝してます、ありがとうございます。“ラストオーダー”に一曲。皆に感謝の気持ちを込めて」との言葉に続き、届けたのは「Thank you」。INORANはシンプルにコードを奏でながら歌い、Ryoのカホーンが素朴なリズムを繰り出す。メンバーによるコーラス、フロアからの歌声が重なって厚みを増しながらも、リラックスした風通しのよいサウンドに酔わされた。お互いの存在に感謝し合い慈しみ合うような、温かい時間がひたすら心地よかった。
ここで、u:zo仕切りのもと、お祝いタイムへ突入。INORANのソロ20周年及び誕生日を祝して、「ハッピー・バースデー」を会場と声を合わせて歌い始めると、INORANはそれに応えるように手を叩き、笑顔を見せる。すると大きなケーキが入場、「どうもありがとう! でもこのタイミングじゃないんじゃない? (蝋燭の火を)今点けてるしさ(笑)」と照れ隠しなのか毒づきながらも、大きく腕を広げ、フロアからの声をもっともっと!と求めた。「投げたら受け止めてくれますか? J(LUNA SEA)じゃないよ?(笑)」とのジョークにはドッと笑いが…。Jが毎年誕生日ライヴでケーキをフロアに投下することを踏まえての発言で、こんなちょっとした場面にも、バンドとソロ活動を両立した20周年の今のモードが良好であることが伺えて、うれしくなる(結局、ケーキを投げることはなかったが)。「47歳になりました。こんなにたくさんの人に祝ってもらえるなんて、俺は幸せです。今日地球上で一番幸せな人だと思います」と感謝を述べ、「こんな47歳の俺に、もうちょっと何かくれますか?」「強要することじゃないから、コンサートって。でもね、俺、欲しいんだよ!」と、更なる熱い盛り上がりをフロアにリクエスト。コール&レスポンスありきで曲が成り立つような「Ride the Rhythm」でなおのこと観客を引き込んでいった。事実、フロアから受け取った熱を原動力に、グルーヴは次第に生命力を帯びていく。抽象的な表現になるが、そこで鳴っているすべての音がまるで生き物のように大きく育っていくのをまざまざと感じたのだ。これまでも美しい景色をライヴで見せ続けて来た「Beautiful Now」は、何度聴いても色褪せることのない名曲。ギターを鳴らし振り下ろした手をそのまま高く掲げたり、フロアを指さしたりして、全身で想いを表わすINORAN。轟音ではあるが決して濁ることのない澄んだ音の重なりに聴き入る時間でもあった。
いよいよライヴは終盤を迎え、「Rightaway」からは怒涛の展開。「ジャンプ、ジャンプ!」とシャウトして煽るINORANの姿からは、20周年を迎えてなお、その場に留まることなく高く跳びたい、遠くへ飛んでいきたい、新しい景色を見たい、という前傾姿勢しか読み取れなかった。フロアを2分割してのコール&レスポンス対決を盛り込んで全体の熱を高めた「Get Laid」は、どこまでも荒々しく。ラスト、声を長く伸ばして歌い終えると、そのまま「raize」へと雪崩れ込んだ。舞い降りた銀テープを観客が掴んで振り上げる様子は、2Fから見下ろすとまるで水面のように眩くきらめいていた。胸に手を当てるなどして、熱く歌詞を噛みしめるように歌っていたINORANは、やがてフロアに下りて右から左へと闊歩。観客はもちろん熱狂したが、それでもなお足りない、とでも言うかのように大きく両手を広げて煽り、熱を求め続けていた。しばしの間があって、再びギターを手にすると、INORANは本ツアーを回想しつつ、「皆の近くに行った時、皆の熱を感じて。『まだここに立ってられるんだな。20周年を越えても』という感想を抱きました」と、今後についても言及。「聴いてくれる人がいないと、音楽は成り立たないと思うので」とも語り、年末12月28日(木)・29日(金)のアコースティックライヴ(FCイベント)開催を発表。終演を待たずして次の約束を示しファンを喜ばせ、「まさか20年も歌い続けると思わなかったし、まさかこんな声が枯れる毎日を送るとは思わなかった(笑)」「不器用でも下手くそでも、想いは絶対伝えたほうがいい」と真摯に言葉を続ける。「どうやって伝えようか?」と方法に迷ったとしても、大事な人にはとにかく想いを伝えたほうがいいと熱弁し、「不器用でも下手くそでも、信じてやってきました。その積み重ねて今があると思うので」と、歌で、音楽で想いを伝えようとしてきた自負を覗かせながら、「それが、下手くそからちょっと下手くそが取れたぐらいの俺が言える、皆へのお返しのプレゼントです」と結んだ。率直で飾りのない言葉には強い実感がこもっていて、強く胸を打たれた。
メンバーとスタッフに労いの言葉を掛け、「素晴らしいお前たちがいるから、いつでもここはオープンしてる。また遊びに来いよ? それをこれからも全力で受け止めるつもりです」(INORAN)と観客に向けて宣言し、最後の曲「All We Are」へ。無数の白いライトに射られながら、優しく語り掛けるかのような、歌うような旋律を爪弾くINORAN。ひたひたと高鳴っていく想いをそのまま音にしたような、メリハリのあるエモーショナルなアンサンブルに惹き込まれていく。「最後、皆声出そうぜ!」(INORAN)という呼び掛けで、大サビでは会場全体が声を合わせると、多幸感に満たされていく。4人はステージ中央に集まって肩を組み、「また会おうぜ! どうもありがとう!」(INORAN)の挨拶に続き、深く長い礼をした。INORANは一人残り、「年末も会おうぜ!」と両手でハートマークを作り、笑顔でステージを後にした。
一方的にステージから何かを与えられるのではなく、ステージとフロアとが共に熱のやり取りをしながら高め合っていく、この光に満ちた場所を胸に、終演後、会場を出た後もそれぞれの居場所で生きていく――INORANは、この会場に居合わせた一人一人の心にそんな強さを与えようとしているように思えた。時には不器用にもがきながら、決して満足せず音楽的挑戦を重ね、20周年を経てなおINORANは新しい景色を熱く追い求めていくのだろう。そう確信する記念すべき夜となった。
取材・文:大前多恵
撮影:RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)
アルバム『INTENSE/MELLOW』
2017年8月23日発売
【初回限定盤】(2CD+DVD+52P写真集スペシャルパッケージ仕様)
KICS-93516~7/¥9,074+税
<収録曲> ※初回限定盤、通常盤共通
■DISC-1 INTENSE SIDE
M1.Ride the Rhythm
M2.Spirit
M3.千年花
M4.Daylight
M5.Determine
M6.raize
■DISC-2 MELLOW SIDE
M1.Shine for me tonight
M2.Your Light is Blinding
M3.no options
M4.Sakura
M5.Beautiful Now
M6.人魚
M7.Thank you
【通常盤】(2CD)
KICS-3516~7/¥3,241+税
【関連リンク】
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INORANまとめ
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