2013-05-20

【LIGHT BRINGER】歌、アレンジ、展開、どれも良いものを聴かせたい

 メンバーチェンジを経て完成させたニューアルバム『Scenes of Infinity』。メタルバンドとしての彼らの持ち味が最大限に発揮され、リーダーのHibiki(Ba)も“メタルの美味しいところを全部詰めている”と語るほど強力な一枚となっている。

──メンバーチェンジがあったわけですが、やはりバンドとして変わりました?

Hibiki「生まれ変わりましたね。ロックな土壌で育った活のいいメンバーが加わって、今までお利口さんだった音がアグレッシブなものになりました。ドラマーに関してはよりアグレッシブな音像にしたくて、何人もオーディションして、パワフルなドラマーを招き入れたという感じだし、JaYはいわゆるギターヒーローの音をたくさん聴いてきてるんで、そういうエッセンスをバンドに持ち込んでくれましたね。」

JaY「イングヴェイ・マルムスティーンやスティーヴ・ヴァイとかが好きだったんで、そういうアーティストにインスパイアされたものというか。」

Hibiki「うんうん。トリッキーなプレイも彼は好きで、いろんなアイデアを持ってるんですよ。最後の「Venus」なんて、かなり遊び心のあるプレイをしてますね。だから、そういうものを求めた時に、ちゃんと応えてくれるギタリストなんです。」

Mao「やっぱりメンバーがひとりでも変わればサウンドはめちゃくちゃ変わるんで、今回はギターもドラムも変わったということで、自分的にはすごくいいアンサンブルになったと思ってます。」

──アレンジは今までは分業制というか、Hibikiくんがベースとなるものを作って、それをメンバーに投げて、個々が自宅で作ったものを最後にHibikiくんがまとめるっていう作業でしたよね。やはりメンバーが新しくなったということで、アレンジの方法も変わりました?

Hibiki「今回はメンバーと顔を突き合わせて作業しましたね。それこそフレーズを作る段階からみんなで集まって。」

Mao「録るまでのステップがいろいろありましたね。プリプロをしたり…JaYが曲を作るってなった時に、彼はパソコンが得意じゃないって言うから、ウチに呼で、彼の“こんな感じで?”ってものを打ち込んだり(笑)。」

JaY「楽しかったね(笑)。バンドしてるなって思いました。」

Hibiki「今まではプロジェクトみたいな感じでしたからね。そういうバンド感というか、一体感みたいなものが音にも出ていると思います。」

──では、新生LIGHT BRINGER第一弾として目指したものは、どんなアルバムだったのですか?

Hibiki「メンバーが昨年の秋にふたり離脱して、その前にも僕と半々で曲を書いていたコンポーザーが脱退したっていうところで、ファンの人たちは“いったいどうなるんだ?”って思っただろうし、実際そういう声が僕らにも届いてたんですね。なので、それを黙らせるものを作ろうって。ファンが欲っしているもの…メロディアスで、速くて、パワフルで、バラエティーに富んでいるっていうものを。なおかつ、メンバーのパフォーマンスを前面に出したものにしたくて。今までも結構難しいことや凝ったことをやってたんですけど、表に出してなかったので、楽器陣は大人しめの印象が自分の中にあったんですよ。だけど、今回は最大限に出してやろうって。ハイテンションな演奏が聴けるアルバムにしたかったというか。」

──LIGHT BRINGERは“メタルの要素とJ-POPの要素をブレンドさせたバンド”ということだったのですが、メタルの比重が増したというか、さらにプログレ化してドラマチックになった印象を受けましたよ。

Hibiki「まさに! そこを狙ったというか。歌、アレンジ、展開、どれも良いものを聴かせたいんですよ。それを具現化させたのが、このアルバムです。」

Mao「1曲目の「Hyperion」はメタルファンには絶対ウケるでしょうね。ヴォーカルのシャウトから始まるし。」

──というか、超絶なプレイだけじゃなくて、起伏のある展開面でも、LIGHT BRINGERの持ち味を詰め込んであって、だからこそ1曲目に持ってきたのだろうなと。

Hibiki「今回は曲順も曲の構成も全曲計算ずくです。展開の流れとかすごく考えて、メタルの美味しいところを全部詰めているし。」

──バックの音が変わったことで、ヴォーカルとしてはどうでしたか?

Fuki「今回はメタルシンガーとしてのFukiの声に飢えている人がいると思った…年末年始にやっていたDOLL$BOXXでは、あえてメタルじゃないものにチャレンジしていたので、ようやく出るLIGHT BRINGERのアルバムで、しかもメタルの曲が集まっているっていうことで、かなりメタリックな歌い方を意識しましたね。ポップな曲は別として、基本的に“メタル曲をこんなに歌えるヴォーカリストは、国内では他にいないぞ”っていうアプローチをしてみたり。なので、メタリヴォーカリストFukiの歌声を久しぶりに聴いてもらえると思います。」

──バリエーションということも含め、収録曲も計算して作られているのですか?

Hibiki「もちろんです! 今までの作品を聴いてもらえば分かると思うんですけど、僕は飽き性なんで、同じ系統の曲は作りたくないんですよ。だから、メタルファンがグッとくる曲だったり…ウチのファンってポップスっぽいものが好きな人が多いんで、そういうものも入れようって。あとはメンバーのスキルにフィーチャーした曲だったり、メンバーみんなでおちゃらけているような曲も書こうって。そうやって軸となるものが決まったあとに、例えばフックとなる「孔雀とカナリア」を書いたりしていった感じですね。今回、Maoも7曲ぐらい書いてきてくれたよね。」

Mao「採用となったのは「孔雀とカナリア」と「人形が見た夢」で、それ以外というのは今までもやったような曲だってことでボツになったんですけどね(笑)。でも、こうやって並べて聴いてみるとすごくいい曲順だと思う…ちょっと悔しい部分もあるんですけど(笑)、すごくいいアルバムになったと思いますね。ちなみに、インストの「Eau Rouge」はJaYが作りました。」

JaY「最初、歌モノやったんですけどね(笑)。Maoの自宅で作って“これ、完璧やな!”ってなったんですけど、Hibikiが“これ、インストにしない?”って(笑)。でも、そこからアレンジし始めて、その日でほとんど出来上がったんですよ。この途轍もない難しいものが(笑)。最初はブレイク後のピアノとリードギターのユニゾンが一番の聴かせどころだったんですけど、アレンジが加わって全部が聴きどころになりましたね。」

──そういうテクニカルな楽曲やメタルの曲もあって、もちろんポップな曲もあるという。

Hibiki「そこは外せないっていうか、それもウチの側面ですからね。僕、「Hydrangea」大好きなんですよ。仮タイトルが“歌謡どうでしょう”だったんですけどね(笑)。そういうポジションの曲は作ろうって…でも、聴き飛ばされるようなものにはしたくなかったので、メロディーはすごく練りました。」

──ウェットな曲ということもあって、こういうしっとりとしたヴォーカルも聴きどころですね。

Fuki「意外と低い声もいいんですよ(笑)。声が大人っぽいですよね。でも、そういう意識は特にしていなくて、むしろ今回はメタルっぽい声を出そうと思っていたんですけど、この曲は仮タイトルが“歌謡どうでしょう”だったぐらいなんで(笑)、松田聖子さんの歌詞を書いている松本 隆さんの歌詞を読んだり、演歌の歌詞を読んだりして、歌詞は完全にそういう方向性でいこうと思っていたから、そうすると自然と声も艶っぽいものになりましたね。あと、今回は「孔雀とカナリア」で苦手だったファルセットにも挑戦したので、今まで聴いたことのない新しいFukiの声が聴けると思います。」

──歌詞は全体的なテーマを掲げて?

Fuki「今まではアルバムに9曲から10曲収録するとなると、それぞれ違う雰囲気の歌詞にしよう、同じ一人称を使うのは避けよう…って、ひとつのアルバムの中で被らないようにバランスを考えていたんですね。でも、今回は自分の中でのルールを変えて、全曲ファンタジーにしようと思ったんです。メタルにはそういう歌詞が合うと思うし、原点回帰の意味も含めて、全曲そういうものにしようって。その中での自分のテーマとして、“一週間の恋愛”を掲げて…それも、違う種族同士の恋愛で。「Fallen Angel」は天使と人間、「Hydrangea」は紫陽花と人間、「Venus」は狸と人間だったり(笑)。あと、「Hyperion」は地球と太陽で、「if」は人と人間…そうやって隠しテーマというか、ルールを決めたほうが書きやすいのもあって。だから、アルバムのテーマがそれっていうわけではないんですけどね。そういう意味では、一人称が“私”っていう歌詞がいくつもあるし、全体的にファンタジックな要素を押し出していますね。」

──そんなメタルなアルバムを引っ提げてのツアーが控えてますが。

Hibiki「過去最大規模のツアーですね。楽しみです。このアルバムはファンに絶対にウケると確信しているんで、そうなるとライヴへの期待も高まるだろうから…どうしようって(笑)。練習しないとなって。」

Mao「今まで以上に楽器の見せ場がたくさんあるので、ライヴが面白くなること間違いないですね。」

取材:土内 昇

(OKMusic)


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