2018-03-01
『人間プログラム』にある多様性と生々しさは、THE BACK HORNのテーマ“KYO-MEI”の原点

今年、結成20周年を迎えるTHE BACK HORN。3月7日にはインディーズ期以来になるというミニアルバム『情景泥棒』が発売され、3月20日からは『KYO-MEIワンマンライヴ & 対バンツアー〜情景泥棒〜』がスタートする。本コラムではデビューアルバム『人間プログラム』をご紹介。彼らが標榜する“KYO-MEI”の原点のひとつと言える本作は、バンドの本質を見事に詰め込んだ邦楽の名盤である。
■1998年結成、2001年メジャーデビュー
THE BACK HORNの名盤をご紹介することになったので、まずは基本的な情報を…とWikipediaを見たのだが──また、こんな書き出しになってしまって恐縮であるが──それを見て若干面食らった。来歴に“2001年4月25日 1stシングル「サニー」でメジャーデビュー。”としかない。メンバーの項目はそれなりに充実しているし、作品、ライヴの項目は結構な分量があるのだが、どんなに見つめても、来歴にはメジャーデビュー以外の情報はない。もちろんリンクが貼られている様子もない。これでは埒が明かないと、公式webサイトへ移動することに。さすがにこちらのほうのBIOGRAPHYはしっかりしており、メジャーデビュー以降のトピックも掲載されているし、2018年にバンドは結成20周年であることにも触れられている。また、1998年以降、毎年起こった出来事=作品リリース、ツアー、イベント出演、タイアップ等もきちんと記されている。…いや、ちょっと待て。作品リリースやツアーのことはWikipediaにもあるわけで、公式サイトではそれを年毎にソートしているに過ぎない…と言わないまでも、ひとつひとつの事項、その中身は両サイトでそう変わるものではない。
つまり、こう言っては何だが、THE BACK HORNというバンドはこの20年間、作品リリース、ツアー等の他に特筆すべき項目がないのかもしれない。当方は彼らの活動をつぶさにチェックしてきたわけではないので、もしかするとファンならば誰でも知っているようなトピックがあって、それがサイトには載せられていないだけかもしれないのだが、少なくとも彼らは頻繁にテレビ番組に出たりしている印象もないので、何かトピックがあったにせよ、それは音源かライヴに付随するものではなかろうかと想像してしまう。これを以てストイックと形容してしまうのは短絡的ではあると思うが、THE BACK HORNには余分なものを削ぎ落とした、言わばアーティストとしての体脂肪率の低さみたいなものを感じたところだ。
■20年間、歩みを止めることなく活動
まぁ、昨今のアーティスト、それこそTHE BACK HORNと同時期にデビューしたバンドには、確かに音源とライヴに集中する人たちも少なくない。よって、彼らを特別視してはいけない気もするが、デビュー以来、毎年ライヴを欠かさず、何らかの音源をリリースし続けているバンドとなると彼ら以外にはそういないのではなかろうか。20年間前後、活動を続けていても新しい音源を制作しない年があったり、下手すると途中で活動を休止していたりするもので、むしろ、そっちのほうが普通なくらいだと思う。彼らと同時期にデビューしたバンドたちのことを調べてもらえれば一目瞭然で、それだけバンドを続けるのは難儀なことであることも裏返しとも言えるが、そんな状況下でコンスタントに活動を続けているだけで立派であるし、特異である。
さらに、こう言っては誠に失礼だから、まず謝っておくが──すみません──THE BACK HORNには特大のヒット曲があるわけでもない。シングルは2007年に発表した「罠」がチャートベスト10入りしたのが最高で、それ以外は最近の作品でも最高位15~20位といったところ。アルバムは2008年の7th『パルス』が5位、2010年の8th『アサイラム』が9位、2012年の9th『リヴスコール』が10位、2014年の10th『暁のファンファーレ』が8位と、安定していると言えば言えるが、ブレイクを果たした…とまで言えるかどうかは微妙ではなかろうか。
■躍動感あふれるダイナミックな音像
誤解のないようにお願いしたいが、だからと言って本稿はTHE BACK HORNを腐しているのではない。その逆である。称えたいのだ。誰にとっても分かりやすい、俗に言うキャッチーさ≒大衆性を備えたわけではないバンドが、結成以来、その歩みを止めることなく、20周年を迎えるに至ったことは、すなわち日本の音楽シーンの多様化の証であろうし、日本のロックの進化と深化を示す出来事でもあるだろう。さらに言えば、THE BACK HORNだったからこそ、そうした新境地を切り開けたのだとも思う。
デビューアルバム『人間プログラム』を聴き、そんな思いも強くした。とにかくエモーショナルな作品である。ボーカルはもちろんのこと、全パートが咆哮しているかのような音を響かせ、それが生物のように絡み合う。一般的にはヘヴィロック、オルタナに分類されるものだろうが、そう単純なものではない気はする。それはM1「幾千光年の孤独」からそうで、ファンキーなギターリフ、ベースがグイグイと楽曲を引っ張る様子は、パッと聴き、所謂ミクスチャー系ラウドロックを思わせるが、サビはややジャジーというか、ブルージーな雰囲気もある。デビューシングルM3「サニー」も同様。重いビートとザクザクとしたギターから始まり、ヴォーカルが重なるパートはスカに転ずる。緩急やメリハリ…と形容するのは少し違う感じだが、躍動感にあふれている。M4「8月の秘密」、M6「ミスターワールド」辺りにもそうした表情があり、そのダイナミズムは極めてロックバンドらしいと思う。
■“情緒的”にエモーショナルなサウンド
そのダイナミックな音像は今もTHE BACK HORNの特徴ではあろうが、決して彼らはそれ一辺倒のバンドではない。その点も『人間プログラム』にきちんと刻まれている。サイケ調のテープ逆回転や不協和音気味のギターが入ったM4「8月の秘密」、あるいは淡々としたギターのループ、アウトロでの変拍子的なリズムが幻想的な雰囲気を出しているM5「水槽」といった中盤もその片鱗を感じさせるが、やはりM11「夕焼けマーチ」が最も顕著であろう。文字通りのマーチングビートで、主旋律は童謡のような明るさを持つナンバー。リコーダーや鈴、トランペット(多分)も入った後半の賑やかさは、アルバムのラストを飾るに相応しい感じだ。
しかも、ベーシックはしっかりとバンドサウンドでまとめられているのがとてもいい。それこそ、M1「幾千光年の孤独」とM11「夕焼けマーチ」をそのスタイルだけで比較したらひとつのバンドがやるようなものではないと思われるかもしれないが、その幅広さにバンドのキャパシティーの広さがシンクロする。“エモーショナル”という言葉を使うと感情的、直情的と受け取られるかもしれないが、そうした狭義な意味ではなく、彼らの場合、“情緒的”と広義に捉えた方がいいと思う。『人間プログラム』はその好例でもあろう。歌メロは和風であったり、フォーキーではあったりするが、それらをバンドサウンドと融合させているM7「ひょうひょうと」やM10「空、星、海の夜」にもその側面を見ることもできる。この辺りは、いろんな表情、感情があってこそ、人であるという、ある意味で真っ当なメッセージが含まれているようでもある。
■生々しくもさまざまな表情を見せる歌詞
そうした多様性、多面性は、歌詞にはっきりと表れているように思う。
《背中に焼けついた十字架》《顔のないキリストが泣いてる》《羽根のない道化師》《太陽のたてがみが揺れてる》《モノクロームの世界に/朝日はもう昇らない》(M1「幾千光年の孤独」)。
《白鳥になれなかったバレリーナが/籠の中 ヒステリックに踊る夜》《血塗られたロマンスは/感傷まみれ 吐き気がするほど/マリーアントワネットの様に気高き/ブタが啼いてるぜ》(M2「セレナーデ」)。
THE STALIN辺りを源流とするパンク寄りのV系が好みそうな、美醜をない交ぜにしつつ、絵画的に落とし込んだ比喩表現がある。
《僕ら 有刺鉄線を越え 何も知らないままで/夢見るように笑ってた/ここから見下ろす景色が 世界の全てと思っていた》(M3「サニー」)。
その一方で、比喩は比喩であるものの、極めて生々しい同時代的な物言いがあり──。
《黒こげ ぼうくうごう/秘密の夢見たね》《大人は やさしい顔/すべてを奪っていく》(M4「8月の秘密」)。
時代を超えた、言霊とも言える内容もある。
《所詮この命 意味などない》《時が来たのなら 命などくれてやる》《果て無きことは知っている 俺に時間がないことも/生きることに飢えている だから生くのだろう》《やがては体朽ち果て 生まれ変わるとしても/俺がここに生きた事 忘れはしないだろう》(M7「ひょうひょうと」)。
《空、星、海の夜 行き急ぐように 身を焦がして/このまま生くのさ 強く望むなら/歌が導くだろう》(M10「空、星、海の夜」)。
ストレートに自らの存在理由を吐露しているかのようなものもあれば──。
《泣き顔 後悔/もう見たくないよ/思い出 壊して/明日へ行く/ららら 時間を超えてゆけ/オレンジの景色の中/置いてゆくのは何もない/涙も連れてゆけばいい/ららら みんなが笑ってる/ららら 僕も笑ってる/憂鬱な毎日なんて/笑って吹きとばせばいい》(M11「夕焼けマーチ」)。
前向きな普遍的メッセージと捉えられるものもある。
ここでもまた人間らしさを感じてしまうが、加えて、ラストに向かうに従って比喩が減り、言葉が分かりやすくなっていくので、そこに何かのストーリーを見い出すこともできそうだ。歌詞は菅波栄純(Gu)が書くことがほとんだというが、彼はよりリアルな歌詞を書くために渋谷の路上に寝泊まりしたことがあるそうである。ストレートにその意味が分かるようなタイプばかりではないものの、そこに独特の生々しさがあることは誰もが認めるところだろうが、その秘密はそんな作家性にもあるのだろう。THE BACK HORNには“KYO-MEI”というテーマがあり、“聴く人の心をふるわせる音楽を届けていくというバンドの意思”が掲げられているともいうが、楽曲の多様性も生々しさもその必要条件ではあったとも思う。
TEXT:帆苅智之
アルバム『人間プログラム』
2001年発表作品
<収録曲>
1.幾千光年の孤独
2.セレナーデ
3.サニー
4.8月の秘密
5.水槽
6.ミスターワールド
7.ひょうひょうと
8.アカイヤミ
9.雨
10.空、星、海の夜
11.夕焼けマーチ
【関連リンク】
『人間プログラム』にある多様性と生々しさは、THE BACK HORNのテーマ“KYO-MEI”の原点
THE BACK HORNまとめ
シーナ&ロケッツ、ソニー盤ベストアルバムを試聴できるスペシャルサイトを解禁
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