2021-11-07

PENICILLIN、千聖 BIRTHDAY LIVE「ROCK×ROCK〜千50聖~」初日公演ライブレポート

10月4日生まれの千聖のバースデーライブ“ROCK×ROCK”が、10月2、3日に恵比寿リキッドルームで2デイズで行われた。本稿ではその初日の模様をレポートする。

 厳かなハッピーバースデーソングのリミックスがSEで大音量で流れ、板付きでスタンバイしていたメンバーが1曲目の演奏を始める。50歳の誕生日というある種人生の節目を祝う今年の“ROCK×ROCK”初日は、勢いのある曲で景気良く始まるのではなく、幻想的な曲「腐海の砂」でスタート。前日まで別プロジェクトThe Brow Beatの2デイズでシャウトをぶちかましたHAKUEIの喉も調子良さそうだし、トレモロピッキングやオクターブ奏法でドラマチックに音壁を作る千聖のギター、3拍子を基本にプログレ的な緊迫感もあるリズムを支えるO-JIROのドラムも安定している。PENICILLINといえばキャッチーでアッパーなロックチューンで知られる存在だと思うが、同時にこうした深い曲をしっかりと演奏できることもライブバンドとして長く生き残っている要因のひとつだろう。

 深海の底に緩やかに、そしてズブズブと沈めていくかのような、そんなサウンドスケープでオーディエンスを異次元に導いたところで、「恵比寿行くぞー!」とHAKUEIが叫ぶと、空気は一転、千聖のバースデーを会場中で祝福するかのごとく、威勢のいいロック曲「NEW FUTURE」をぶっ放す。そしてO-JIROのフィルと千聖のフィードバックを合図に、間髪入れず「幻想カタルシス」へ。タッピングやアーミングを交えた往年のギターヒーローを彷彿とさせる千聖のギタープレイがこの日も冴え渡るが、そんな中にも昭和歌謡的な情緒やダークさを漂わせているのがPENICILLINスタイルだ。
 そうして頭3曲が終わると、大きな拍手が場内に響き渡る。

 「千聖くんが50歳を迎えるということでバースデーライブが開催できて良かったです。今日は晴れたな。昨日は台風だったけどな。」とHAKUEI。
永遠の18歳の千聖は50歳のバースデーライブという名目に対し「普段は3代目千聖なんだけど、今日は初代千聖に来てもらったから大丈夫」と説明。続けて「よく生きていたな」と千聖が言い放つと、「よく続いてんな」とHAKUEIがいい「なんで続いているか教えてあげようか? 本当はみんなのおかげと言いたいんですけど、でも今日だけは許して。千聖リーダーのおかげです!」と、この日の主役を称え次のセクションへ。

 「border line」が始まり、葛藤する少年を鼓舞するような歌詞がどこか郷愁的で、胸に響く。一方「僕には翼があるんだ」と歌う次の「魔法ダイヤ」は少し大人になってからの葛藤と希望を想起させ、ある種これまでの半生を追ったような展開に。曲の後半ではスタンドにセットされたアコギを奏でつつ、続いて、アコギスタイルのまま「理想の舌」へ突入。パーカッシブなギターが情熱的で、バイオリンの同期も相まって、さながら『情熱大陸』ばりのドラマチックさを感じさせる。

 ここでまた鳴り止まない拍手が起こり、O-JIROが口を開く。「台風もいなくなって良かったですね。絶対来ると思ってたんですけど。たぶん今日は本人の強い望みが叶ったんでしょうね。千聖「50歳までバンドをやるということを想像してましたか?とかよく聞かれるんだけど、正直50歳になることすらイメージしてなかったよ。でも俺はたぶん20代より今元気だよ、ライブは。オフステージは20代よりめちゃくちゃだけどね(笑)」。

 中盤は「LOVE DRAGON」「one star」「JUMP#1」とオルタナ的なバラードだったり、シアトル的なヘヴィロックだったり、ハードなロックンロールだったりと、PENICILLINの楽曲の幅広さをここでも見せつける。なお、「LOVE DRAGON」には“一番星”、「one star」には“大地を蹴って”というワードがある。言葉つながりでこの3曲を続けたのだとしたら、それもワザアリだ。

 「非常事態宣言明けたんだよね。まだ声出しちゃいけないんだっけ? でも声出しちゃダメなライブってもうなかなかないぜ。ちゃんと声出せるようになったときにはもう思いきり、こういった状態になる以前より楽しめるようにしましょう」

 そんな名MC後に名曲「Melody」を激しくプレイしたのち、ハードコア曲「快感∞フィクション」を続け、昨年急逝したエディ・ヴァン・ヘイレンを偲ぶような爆撃機的なギターソロを轟かせてから、本編ラストとしてフリージャム的な演奏でグイグイ攻めていく「Desire」を畳み掛けライブ本編が終了。

 アンコールの拍手に応え、ハッピーバースデーソングをSEに、ステージにケーキとともにメンバーが再登場。
 「ケーキをもらって景気がいいね!」
 そんなギャグでいつも以上にハードに攻撃しスベった千聖だが、オーディエンスが声を出せないことにむしろ救われたかもしれない(笑)。

 この日のセットリストは千聖が自ら組んだそうだが、HAKUEIが「お、この曲がきたかとセットリストを見たときに思った曲です」と伝え披露されたのは、インディーズ時代の曲「Little Love Story」。そして次の曲「fantasia」に続く。O-JIROのマーチングスネアで始まる応援歌のような曲で、千聖の誕生日を盛大にお祝いした形でライブは一旦終わるが、その後、配信を除く会場のみでもう1曲「FOR BEAUTIFUL MAD HUMAN LIFE」を披露して全てが終了した。

 PENICILLINが結成された1992年のころは、50歳でロックバンドをやるなんてことをほとんどの人が想像していない時代だった。それが今、こうして50代でも普通にロックバンドができる時代になった。PENICILLINがその功績の一端を担ったことは間違いない。ぶっちゃけ、当時はPENICILLINのようなバンドが長続きするはずはないと思う人も多くいたはずだ。ロックは孤高なものであるべきーー。そんなパブリックイメージをぶっ壊し、ロックは何でもありの自由なものであり、多くの人と共有できるものであるということをPENICILLINはその音楽とライブで示した。結成以来変わらず、キッズのような初期衝動を持ち続け、そしていつまで経ってもキラキラしているロックバンド、PENICILLINここにありといったバースデーライブだった。

TEX:吉田幸司(ROCK AND READ)
PHOTGRAPHER:折田琢矢


【ライブ情報】
新譜「Euphoria」リリース記念ライブ
Arise to Euphoria
11月23日(火)
新宿ReNY
開場17:00/開演17:30
全席指定10,000円(税込/D別)


【全ての情報はこちら】
PENICILLIN Web
↓↓
https://www.penicillin.jp/

ファンクラブ入会案内はこちら
↓↓
https://www.penicillin.jp/fanclub/enrollment
【セットリスト】
千聖 BIRTHDAY LIVE「ROCK×ROCK〜千50聖~」
10月2日(土)
SE
「腐海の砂(Intro Long Ver.)」
「New Future」
「幻想カタルシス」
「border line」
「魔法ダイヤ」
「理想の舌」
「Love Dragoon」
「one star」
「JUMP#1」
「Melody」
「快感∞フィクション」
〜Gt.Solo〜
「Desire」
-ENCORE 1-
「Little Love Story」
「fantasia」
-ENCORE 2-(有観客のみ)
「FOR BEAUTIFUL MAD HUMAN LIFE」


10月3日(日)
SE
「天使よ目覚めて」
「幻想カタルシス」
「記憶の固執」
「冷たい風」
「魔法ダイヤ」
「ネオグラマス」
「Heartbeat」
「one star」
「WHITE HOLE」
「Desire」
「快感∞フィクション」
「Blue Impulse」
-ENCORE 1-
「ひび割れたHOLY NIGHT」
〜Gt.Solo〜
「Dead Coaster」
-ENCORE 2-(有観客のみ)
「スペードKING」

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