2014-05-08

ザ・クロマニヨンズ、魅力にあふれたカップリングコレクション・アルバム

 「弾丸ロック」から「とがってる」まで、揺らぐことのないロックンロールが息づく、ザ・クロマニヨンズのカップリングコレクション。リード曲となんら遜色のない名曲の数々に圧倒される。


 4月9日にリリースされたシングルコレクション・アルバム『13 PEBBLES~Single Collection~』に続き、5月14日にカップリングコレクション・アルバム『20 FLAKES ~Coupling Collection~』をリリース。2006年のデビュー以来、とどまることのない快進撃を続けるザ・クロマニヨンズの足跡を年代順に綴ったのが『13 PEBBLES』だとしたら、今回はそのカップリング、つまりもうひとつの顔を収録した楽曲集にあたる。しかし、もうひとつの顔でありながら、どれも負けず劣らず強烈な存在感を発揮する曲ばかり。

 鈴鹿サーキットCMソング「ワハハ」、映画『ヤッターマン』の劇中歌である「ヤッターキング2009」、本人たちが出演して話題になったペプシネックスTV-CMタイアップソング「電撃バップ」など、リード曲以上に濃い印象を残す曲、さらにはライヴで欠かせない曲もあるなど、前出のシングルコレクションとまったく見劣りしない内容になっている。

 カップリング曲に名曲あり。そう言われることが多いのは、一般的にはリード曲がある程度の体裁を気にするのに対し、カップリング曲は遊び心を出せる余裕があり、その意識の差が楽曲の持つ魅力につながることが多いと思われているからだ。しかし、彼らにとってリード曲であるとか、カップリング曲であるといったことは、実はそれほど問題ではない。作る時からそういった差別化を図って作っているわけではないし、もっと言ってしまえば、シングル曲、アルバム曲といった区別もなく作っているので、本当はどの曲も等しく最高の作品として世に送り出されているからだ。

 そんな理由もあって、ザ・クロマニヨンズのカップリング曲も名曲ぞろい。全ての曲が生命力にあふれ、今、目の前で誕生したばかりのような熱が渦を巻いている。シンプル極まりない8ビートとくっきりしたメロディーで突き抜ける「弾丸ロック」は、記念すべきデビュー曲「タリホー」のカップリング曲で、清々しいほどの後味が今聴いても新鮮。「タリホー」のもう1曲のカップリングは「クロマニヨン・ストンプ」。江戸っ子のようなべらんめえ調の掛け合いの歌と合唱できるサビが愛おしい。スカビートとファルセットコーラスの「チンパンマン」、レゲエをベースにした「マナティ」など、陽気さを全開にした曲の楽しさも彼らならでは。スピーディーなリズムに乗せた極端に少ない歌詞に驚かされる「笹塚夜定食」。同様に、これ以上ないほど簡素化された言葉だけで構成された「レッツゴー宇宙」「オレなとこ」も、勢いにあふれたロックンロールとして驚異的な完成度を誇っている。ハープのイントロと間奏のギターソロがブルージーな空気を醸し出す「たこあげ大会」も渋カッコ良い。「ヤッターキング2009」は、『ヤッターマン』オリジナルアニメ第2シーズンの主題歌「ヤッターキング」を実写映画『ヤッターマン』用にアレンジした曲。原曲の作詞作曲と歌を担当した山本正之氏と甲本ヒロトは長い付き合いということもあり、このコラボが実現した。そして、「BLITZKREIG BOP(電撃バップ)」はラモーンズのカバー。誰もが知る名曲を刃物のような鋭さによって震える名演に仕上げた。珍しくスローで哀愁漂う曲「サイダー」に続いて、ラストは「とがってる」。“とがり続ける”ことで生まれる、揺らぐことのない自信がしっかりとここに根付いている。それこそがロックンロールの本質。

 カップリングという枠を外しても、力強さと熱気にあふれたナンバーがぎっしり詰まったアルバム。時代や流行りと関係なく輝き続ける楽曲たちがこの中に息づいている。

文:岡本 明

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