2014-06-05

空想委員会、思っていても、絶対言わないことを書いてくる

 アルバム『種の起源』でメジャーデビューを果たす空想委員会。三浦隆一(Vo&Gu)の書く詞は、恋愛に対する劣等感や不平といった心の内側を赤裸々に語っている。全て新曲で挑んだ、このデビュー作についてメンバーに訊いた。


──空想委員会のキャッチコピーには“共感したら負け組!?”というような、思わず苦笑してしまう言葉が並んでいますね。

三浦 そうですね。ただこれは間違っていないんですよ。

佐々木 歌詞を見ると分かると思うんですけれど、キャッチコピー自体が三浦さんのプロフィールになっているので(笑)。

岡田 僕らも恋愛偏差値が高いわけではないんですけれど、“究極の低恋愛偏差値”まではいかないですから。

──そんな三浦さんの独特の見方がストレートに表現されていると感じたのは、女性を株に例えた「ラブトレーダー」で。

三浦 この曲はみなさん反応されますね。でも、僕は学生時代にずっと思っていました。“あの子、これから伸びるな”って(笑)。株に例え始めたのは、社会人になってからですけれど。

──男性の本音がさく裂した詞ですよね。三浦さんは学生時代をネタにした詞を多く書かれますが、そのきっかけは?

佐々木 三浦くんは高校時代がグレーだったんだよね。

三浦 忘れないんですよ。あの時の悔しさを。きっと他の同級生は僕がメジャーデビューしたと知ったら、びっくりすると思います。“まさか、あの三浦が歌!?”って。

──そうだったんですね。「ラブトレーダー」はどんな仕上がりになったと思いますか?

岡田 結果的に曲の雰囲気と歌詞がいいバランスになったね。

佐々木 初めてキーボードが入っている曲なんです。三浦くんがデモを作る時、結構キーボードでメロを打ったりするんですよ。この曲に関してはすごくきれいだったので、“そのまま使ってみよう”と。アルバムならではの遊びの入った曲です。

──また、4曲目「エリクサー中毒患者」はタイトルから想像するイメージとは違った穏やかな雰囲気の曲ですね。

三浦 これはアコギで鼻歌から作ったんですよ。

佐々木 あぁ、それはメロディーの流れから分かるね。アレンジはメロディーがきれいだったので、アコースティック感を残したかったんです。だから、やさしく作りました。

三浦 バラードは鼻歌で自然に出てくるんですよ。でも、どうしても出ない時は、鍵盤で最初に弾いた音から始めてみたりするんです。普段の自分の選択とは違った音を鍵盤で弾き始めてみると、違うパターンが出てくるので。

──楽曲はゆったりとしているんですけれど、《画面の中のあなたをなでてあげる》という部分は怖さもあって(笑)。

三浦 でも、絶対こういう詞の人、いるよ。

佐々木 いるね。最近ライヴのお客さんで男の子が増えているんです。たぶん“委員長、分かるわ”って歌詞に共感する人が増えてきているんじゃないかな。みんな思っていても、絶対言わないようなことを書いてくるから。今回のアルバムでさらに“委員長、よく言った!”と感じる人もいると思う。

──そうだと思います。そして、リード曲は「八方塞がり美人」。

佐々木 これは三浦くんの出る声のいいところ、必死さを出すためにデモの時よりキーを半音上げて。あと、疾走感に関しては、曲の最初のギターのジャジャッ、ジャジャッっていうのがあったので、それに合わせて疾走感を止めずにアレンジしました。さらに岡田くんがバキバキのベースを弾いてきたので、いやもう“カッコ良いね!”っていう感じです。

──岡田さんは普段あまりバキバキ弾かないんですか?

岡田 このバンドはギターと歌がメインというイメージなので、基本自分は控えめに後ろでサポートする意識でやっているんです。でも、「八方塞がり美人」は結構攻める曲というイメージがあったので、後ろからも攻めようと思いました。

三浦 歌詞については、もともとラジオのレギュラーをやっていた時に、恋愛相談を受けていて…この僕が(笑)。で、相談してきた子に対して“あなたは○○ガールですね”とかタイトルを付けていた、そのうちのひとつなんです。最近働く女性に接する機会が増えてきていて、“頑張りすぎじゃないのかな”と思ったんですよね。でも、まさかこれがリード曲だとは思わなかったです。

佐々木 でも、空想委員会らしいと思う。まさに空想じゃない?

三浦 あぁ、それこそ何も巻き起こっていないからね。

佐々木 そうそう。三浦くんの頭の中にカメラが入っていって、終わって出ていくっていう感じですね(笑)。

──そして、壮大で心に染み渡るラスト曲「自然選択説」。

三浦 僕は自分が書いた曲で“これ、やりたい”とか言わないんですけれど、この曲は“すげぇのできた!”と(笑)。

佐々木 あはは。でも、最初聴いた時、本当に感動しましたよ。

三浦 歌詞は苦労しましたね。歌いたいことは毎回明確にあるんですけれど、それを効果的に伝えるにはどうしたらいいかって。めっちゃ書き直しました。

──あと、共感すると負け組だそうですが(笑)、「ドッペルゲンガーだらけ」の《それ見て気付くの 僕には色がない いつでも景色に同化するだけ》という詞はすごく刺さります。

岡田 僕も“色がない”に強く共感して。佐々木くんは明るいタイプ、三浦さんは真面目で知的な感じ、というイメージがあるんですけれど、自分は何もないと昔から思っていて。色で例えると白だな、というイメージがあったので。

三浦 いや、岡田くんは“ない”というのが色だからね。

岡田 おー、やった! ずっと付いていきます!!

──委員長(三浦)からは的確なひと言が出てきますね。

岡田 そうなんですよ。やっぱり言葉が刺さるんですよね。

三浦 でも、そういうふうに聴いてもらったらいいですね。せっかくフルアルバムでメジャーデビューするから、曲的には今までと変わっていくところが混在しているCDにしたかったので、それは今回ちゃんと出せたと思います。

佐々木 ただ、まだ完成した実感が沸かなくて。ライヴをやってお客さんの反応を生で観た時に、一番届けた感じがするんですよね。ライヴはライヴでの届け方を考えてやるので、それも楽しんでほしいです。最強のライヴをやりますから!

取材:桂泉晴名

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