2014-11-03

黒夢、清春のバースデーにツアー『夢と鞭』終幕

去る7月19日、人時の42回目の誕生日に幕を開けた黒夢の「TOUR 2014 BEFORE THE NEXT SLEEP VOL.1『夢は鞭』」が、10月30日、清春の誕生日に着地点へと到達した。言い換えれば、清春が46回目の誕生日を黒夢としてのステージ上で迎えたということである。

この夜の会場は、清春自身にとって初となる東京・新木場STUDIO COAST。定刻スタートが常だった今回のツアーにあってはめずらしく30分ほどの開演遅延があったが、「ZERO」をオープニングSEに据えながら「FAKE STAR」で始まったこの夜のライヴの演奏内容は、時間軸を超越するかのような新旧織り交ぜてのライヴが重ねられてきた今回のツアーを総括するかのように、途中にアコースティック・パートなども盛り込みながら4回にわたるアンコールを含めて全32曲にも及び、清春と人時がステージを去る頃には、すでに時計の針が23時をまわっていた。

ライヴ自体の充実ぶりについては言うまでもないが、清春の誕生日ならではのサプライズも用意されていた。アンコールの際、人時がアコースティック・ギターを弾きながら「Happy Birthday To You」を歌い始め、場内を埋め尽くしたオーディエンスを合唱へと誘うと、巨大なバースデー・ケーキが載せられたワゴンを押しながら登場したのは、なんと清春の敬愛するMORRIE(DEAD END、Creature Creature)。この計らいについてまったく知らされていなかった清春は「いや、俺、ホントに知らなかったんで……」と少々うろたえていたが「46年間でいちばん幸せな誕生日です」と喜びを口にしていた。友達、後輩、崇拝の対象、ファンに囲まれながらその瞬間を迎えて幸福だ、とも。

もちろん清春が味わっていた幸福感は“誕生日だから”というシンプルな理由のみに起因するものではない。人時も「過去、こんなに思い入れを抱けるツアーはなかった」と語っていたが、これまでの経過からすればあり得なかったはずの今回の全国ツアーが、誰にも想定し得なかったほど濃密で充実したものになったからこその喜びを、彼ら自身が噛み締めていたはずなのだ。そうした現実についての清春の感謝の言葉は、「みんなのせいだと思います」という実に彼らしいもの。今現在の黒夢にとってかならずしも不可欠なものとはいえない地方公演や小さなライヴハウスでの公演も多数含まれていた今回のツアーだが、彼は「過酷な感じをもうちょっとやっていきますんで……愛してください」と言い、嬌声と拍手を浴びていた。

その言葉通り、この夜をもってVOL.1が終了したとはいえ、黒夢のライヴ活動はまだまだ続いていく。11月には1996年以来となるBOYS ONLY、つまり男性限定ライヴが名古屋と東京で開催され、さらに12月4日には郡山公演を皮切りに今回のツアーの後半、「TOUR 2014 BEFORE THE NEXT SLEEP VOL.2『毒と華』」がスタートすることになる。このツアーは年をまたぎながら2015年の2月9日、黒夢のデビュー記念日まで継続される。厳密に言えば、その先には清春の喉の不調のため延期となった広島でのライヴ(9月26日分)の振替公演も控えているわけだが、この夜の清春の口ぶりからは、まだまだこの“幸せなツアー”を続けていきたいという心情もうかがえた。しかしもちろん、黒夢は、常に当たり前のようにそこにいる存在ではない。観る側である我々も、これから先のひとつひとつの機会を大切にしながら、この唯一無二の“小さな王国”を揺らし続けたいものである。

TEXT :増田勇一
PHOTO:山内洋枝

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