2013-05-20

【LM.C】“カップリング”というポジションの面白さ

 間もなくデビュー7周年を迎えるLM.Cが、シングルのカップリング曲をコンパイルした『B-side BEST!!』をリリース。バリエーションのある彼ら流のポップなロックチューンの個性がより際立ったアルバムに仕上がっている。

──LM.Cは一曲入魂と言いますか、アルバムなのか、シングルなのか、最終的にどんなフォーマットでリスナーに届けられるのかを意識することなく、曲作りを進めていきますよね。『B-side BEST!!』に収録されたマテリアルも結果的にシングルのB面、カップリングという位置付けになったものですが、そういった楽曲を改めてひとまとめにして聴くと、メンバー自身も何か見えてくるものがあると思うんですよ。

Aiji「何だろう? 昔からアルバムとかシングルとか分けて曲を考えることはしないんですけど、いわゆるA面曲と比べてみると、ジャンルだったり、雰囲気だったり、その時々でのアプローチを試している曲は多いんですよね。そういった意味では、いろいろやってきたなとは思います。世界観というものが、よりはっきりしている曲も多いかな。どちらかと言うと、A面曲は歌詞のメッセージとかがピックアップされるような作りになっている気がするんですよ。でも、B面曲のほうは、もっと音が歌詞に寄り添っている雰囲気の作品が多いかなとは思いますね。」

maya「いろいろな面で不思議な感じはしますね。自分たちの作品なので、把握はしてるはずなんですけど、こうやって並ぶと予想とは外れた響き方というか…そう思うとね、多分、A面集(『☆★Best the LM.C★☆2006-2011 SINGLES』/2011年)は想像通りのベストとしてのアルバムって感じだったんですよ。集大成というかね。だけど、今回はもうちょっと違う印象で、“B-sideBEST!!”というタイトルが合っているような…裏のLM.Cというか、対になってる感じがするなって。しかも、普通のオリジナルアルバムにはない、カップリング曲特有のポジションらしい印象を受けるアルバムになったなと思うんですよ。」

Aiji「歌詞を見ると、A面曲はリアルを歌うというか、自分に置き換えて聴いてもらえるような作品が多いと思うんだけど、カップリングは絵本的というか、ファンタジックなストーリーが多い気はしますよね。無意識だと思うんだけど。」

──作詞家のmayaくんとしても、やはりそう感じますか?

maya「LM.Cを6年半やってきて、いわゆるシングルに関しては、一般的なシングルの作り方をしてきたんですよね。世の中に対する入口というか、最大公約数的なものであるべき…とは思わずとも、自分的にも、LM.C的にも、そういう分かりやすいものが好きだから、そうしてきたと思うんですけど、やっぱりその裏側にくるのはそうじゃないものというか。オリジナルアルバムだと、何曲か並んでいる中でバランスは見ると思うんですよ、タイトルにしても、歌詞で使う言葉にしても。だから、A面を集めれば、伝わりやすい言葉やテーマが選ばれていることが多いから、パッと見の一貫性はある。でも、そうはいかないカップリングの場合は、集まるとまた面白いことになるという(笑)。さっき言ったカップリングというポジションも、昔から結構好きなんですよ。そのバンドのキャラが表れていたりとか…ありますよね?」

──ええ。アルバムの中の1曲とは違った、マニア心をくすぐる性格を持つようなものも少なくないですね。

maya「そう。だから、他のバンドのシングルを聴いてると面白いですよね。それこそLUNA SEAとかは、すごく輝いてたイメージがあるんですよ。変な話、僕はLUNASEAのどの曲が好きかと訊かれたら、まず、「RAIN」(シングル「ROSIER」に収録)が出てきちゃうぐらいですからね。」

Aiji「自分は10代の頃から、シングルって買った記憶があまりないんですよ。だから、こうやってカップリング曲だけがパッケージされると、新しいアルバムに出会える感じはするんですね。まぁ、曲順とかには大したストーリー性はないけども、全体を通しての世界観としてはいいし、これもひとつのアルバムとして聴いてほしいなぁと思ったりはしますね。」

──ストーリー性という点では、リリース順に並んでいることで、大きな流れが見えますよ。しかし、本当に曲調も幅広いですよね。初期の「@FUNNY PHANTOM @」と最近の「Shibuya Cantabile」なんて、まったく別のバンドに思えるぐらいですし(笑)。新曲「激FANFARE」も収録されますが、これは本作に入れることを目的に書いたのですか?

Aiji「いや、前のシングル「DOUBLE DRAGON」を作ってた時に、5曲ぐらいレコーディングしてたんですよ。その中の1曲で、この作品にハマりそうなものをってことで選んだ感じですね。だから、いつもの感じですよね。これがカップリングとか、これがメインでみたいな決め方じゃなくて。」

maya「Aijiさんから曲をもらって、聴いているうちに出てきたのが“FANFARE”というフレーズで。「ningyo no namida」とか「Shibuya Cantabile」とか、全曲そうなんですけど、何か…フッとくるんですよ(笑)。そこで、これはFANFARE感だなと思って歌詞は突き進みましたね。」

──聴き手の背中を押してくれるような内容ですよね。

maya「そうですね。わりと終盤までは“FANFARE”ってタイトルだったんですけど、最終的に“激”を付けたんですね。まぁ、そこもフッときたんだけど(笑)、“激励”からのものですね。でも、ここまでストレートにこういうことを歌ったことはなかったと思うんですよ。分かりやすく言うなら、いつもはもうちょっと“自分で何とかしなよ”ってニュアンスは残してた気はするし。多分、4~5年前だったら選んでなかっただろうなという言葉や表現が使われてますね。」

──それも歴史ですね。さて、夏の全国ツアーを経て、10月5日には東京・渋谷公会堂で結成7周年のライヴが行なわれますが、その前にじっくりと聴いておきたい作品ですね。

Aiji「うん。全曲自信があるし、いろんな曲のタイプがあるから、LM.Cを初めて知る人には、いわゆるA面ベストを聴いた時よりも、引っかかるところは多いかもしれませんね。」

取材:土屋京輔

(OKMusic)


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