2013-02-19
【BRAHMAN】結局、ずっと自分と戦っているんですよ
身震いするほどの大傑作。バンドの根幹であるハードコアなサウンドを極めつつ、驚くほど豊かなメロディーとストレートな言葉を前面に打ち出した、約5年振りのオリジナル作。『超克』についてTOSHI-LOW(Vo)が熱く語る!
【誰かに克つことではなく 己に克つことだなと思ってる】
──去年の11~12月のツアーで、すでに新曲を何曲かやってましたよね。確か「空谷の跫音」と…。
「「今際の際」ですね。」
──あの時点で、アルバム制作はどのくらい進んでいたんですか?
「いや、できてなかったですよ。トラックはぼちぼちあったけど、詞がまったくない状態のものが、あと3つぐらい残ってましたから。結果、マスタリングの朝まで歌ってましたからね。」
──マスタリング直前に歌い直すなんて、できるんですか?
「トラックダウンをほとんど済ませておいて、歌は入れてはあったんだけど、やっぱりやり直そうと思って。マスタリングする日の朝10時から歌いました。しかも前の日に一度歌い直して、その日が名古屋のライヴで、その帰り道に“もう一回やらせてくれ”と言って、その次の日に歌ったんですよ。」
──ちなみに、どの曲ですか?
「一番最後の曲です。「虚空ヲ掴ム」。」
──その執念って、何なんでしょうね。
「締め切りがある職業の人じゃないと分かんない感覚かもしれない。そこで追い込まれた時に、謎の力が出るんですよ。“終わった”って一回気を抜くんですけど、少しすると“あれ?違う”っていう違和感を感じる。1年間時間があっても、最後の日までやるんだろうなという気はしますね。」
──BRAHMANらしいですね。
「というか、1年間あったら1週間前までやらない(笑)。いつもそこであたふたするんだけど。泣きそうになりますよ、締め切りが見えてくると。逃げ出しちゃおうかなと思う。」
──“BRAHMAN は寡作だ”というイメージがあるじゃないですか。今回もオリジナルとしては5 年振りだし、すごくゆっ たりしたマイペースに見えるというか。
「でも、ライヴやってますからね。ライヴとか自分が過ごしてきた経過の中で出てきたものが音楽にならないと、自分たちは乗るタイプじゃないので。ギターや鍵盤が弾ける人なら曲はできると思うんですよ。けど、本当に心の奥に届く曲ができるか?というのはまた別な話なので、曲の数ではないと思うし。他の人の曲を聴くと、コマーシャリズムの多いA面の曲と、埋め合わせみたいなB面の曲にしか聴こえないような、そういうものが多いので。そういうものを作る気はないし、作れないですよ。」
──いや、それがBRAHMANだと思いますよ。
「じゃあ、100パーセントできたか?というと、後悔は残ってますけどね。ただ、その時の死力を尽くした気はします。それが出ないと駄目だと毎回思うし、追い込まれることも必要なのかなと思います。毎回、イヤだなと思いますけど。」
──気になることから順に訊いていきますけど、前作までと明らかに違うのがほぼ日本語の歌詞と日本語タイトルに統一さ れたことで、そのへんは自覚してやってることですよね。
「究極は、何でもいいと思ってるんですよ。ただ、今は日本語から逃げたくないなと思っているし、まだ決着が付いていないので。自分が思っている日本語の弱さとか、自分たちの楽曲は日本語に不向きなんじゃないか?と思って譜割をしていた部分に関しては、乗り越えた感覚があるかなと思いますけどね。」
──逆に、何で今まで英語メインだったんだろう?と思うくらいなんですよ。音への乗り方も、意味の伝わりやすさも、間違いなく今までで最高の作品ができたと思いますし。
「言葉を選ぶ時に、今までだったら恥ずかしいなと思っていた言葉も使っているし、逆に言えば、探してもそれしかなかったんだという気がする。それを違うかたちに言い換えたり、英語に置き換えたりしたら意味がないと思えたので。自分の思っているかたちのまま歌いたかったということですね。いびつな気持ちをそのまま、できるだけ言語化したということです。」
──1 曲目「初期衝動」なんて、逆にびっくりでした。言葉ではよく使うけど、タイトルとして見たのは初めてかもしれない。
「それは、付けちゃった時にすごい悩んだんですよ(苦笑)。どうしようかな?って。でも、字面はカッコ良いし、『白い暴動』みたいじゃないですか。」
──クラッシュですね(笑)。
「そういう常套句みたいなものをタイトルにするのはどうかな?とか思ってたんですけど、そういうものじゃないと意味がないと思ったんですよね。前にOVERGROUND ACOUSTIC UNDREGROUND で“夢の跡”というタイトルを付けた時にも、似たような感覚があったんですよ。“これしか出てこないのかよ、恥ずかしいな”とか思いながら付けたんだけど、今回はもっとそれの強いやつ。バン!と出ちゃって、変えられなかった。詞が完成する前にタイトルが付くのは珍しいんですけど、それが先導していった感じ。」
──それが1 曲目にあるというのが、このアルバムの性格を非常によく物語っているというか。
「だから、そういうことなんでしょうね。名は体を表すというか。自分で自分のケツを叩くような、そういうものをずっと探していて、自分を叱咤しながら歌詞を書いてるから。疲れますけどね。」
──この2年間…特に震災以降の話ですけど、TOSHI-LOWさんが感じたことがそのまんま歌詞に入ってますよね。あえて言うならば、怒りのパワーみたいなものが根源にあるような。
「言いたいことはありますけど、でも同じように自分にも言いたいことがあるんですよ。“じゃあ、自分がどれだけできたのか?”とか、“やった気になってんじゃねぇよ”とか、自分で自分に思うこともたくさんある。他のものに対して怒りがあっても、最終的に自分のところに戻ってくるんですよ。じゃあ、怒りを止めるのか?といったらそうではなく、それが戻ってきた時に自分が耐えられるように強くなっておく。そして、もっと怒るなら怒る、優しくなるなら優しくなる、そこを諦めたらおしまいだなと思ってるんで。例え歩みが遅くても。」
──吐いた言葉は必ず戻ってくると。
「何年か前から分かっていたつもりだったんですけどね。結局、ずっと自分と闘っているんですよ。その過程として、社会という標的があったとしても、それは通りすぎていくもので、最後は己なんです。誰かに克つことじゃなくて、己に克つことだなってすごく思ってるし。」
──今言われたこと、そのものズバリですよね。“超克”という タイトルは。困難に打ち克つこと。
「その困難が見えやすいかたちで出てきたものが、東日本大震災であり、原発事故であると思うんですけど、でも本当の意味の困難というのは、もしかしたらずっとあったわけで。もちろん、そういうことがあって気付かさせてもらったから、今回こういうことになってるわけですけど、もとからそこにあったとも思うんですね。それは自分が見てなかっただけじゃないか?という意味で、やっぱり己に返ってくるんです。そういう意味で、己と闘うということがはっきりしましたね。それは震災前の、ただ気ままに生きていた己ではなくて、社会や世界に対するもっと大きな己として。」
──はい。
「そういう大きなものと、掌ですくえるぐらいの小さなものが交差している。そういう実感が今はあるんです。」
【言葉が強くなってくれば 強いメロディーが必要になってくる】
──今回声を大にして言いたいのは、メロディーの良さですね。こんなにメロディーが豊かで、歌が胸に沁み込んでくる作品は今までなかったと思います。
「みんなそう言うんだけど、そんなにメロディーなかったですか?(笑)自分では勝手に“メロディアスすぎるかな”と思ってたぐらいだから、今までは。だって、メロを付ければ付けるほど、弱々しくなっていくことが多かったから。でも、今考えると自分の歌い方が弱かったせいでもあるし、それに合う日本語の選び方が難しかったせいでもあるかもしれない。そこは自分の中で開き直ったのと、ヴォーカルとして向き合うということがあったんですよ。」
──あぁ、なるほど。
「俺は歌手になりたいわけではく、シンガーソングライターになりたいわけでもなく、バンドマンになりたいと公言してきたんで。バンドのフロントマンとしての役割を消化できればいいとずっと思っていたので、明確に“歌とは何か?”“ヴォーカリストとは?”というものを突き詰めたことがあまりなくて。今でも別に、それを音譜で追おうとは思ってないですけど、歌えないから歌わないのと、歌えるのに歌わないのとでは全然違うから。」
──ですよね。
「そこで自分が努力していなかった部分に対しては、震災以降、ヴォーカルと向き合って、初めて自分の声をちゃんと聴いた気がします。そうすると、今まで頭にあったけど“複雑だからやめとこう”とか言って使うのを避けていたメロディーというものがあったんですよ。それは難しいということもあるし、さっき言ったみたいに弱々しく聴こえるからという理由で避けてたんですよ。歌モノみたいになりすぎちゃうというか。けど、言葉が強くなってくれば強いメロディーが必要になってくるわけで、その強さというのは怒鳴り散らす強さではなく、メロディーの持つ流れや旋律としての強さが、どうしても必要になったんじゃないかなと自分では思ってますけど。」
──よく分かります。
「ただし、そういうメロディーを書けたとしても歌えないと意味がない。俺の歌える幅はもともと広くはないので、鍵盤だったら両手を合わせたぐらいの範囲の中で自分を紡ぎ出すということの中で、今までだったら鼻歌で“これでいいじゃん”とか思っていたものを、いろんなことを考えながら、初めて向き合ったという感じがしてます。今まで違うところばっかり向き合ってたんですよね。体を鍛えるとか。」
──確かに(笑)。
「そういうところばかり向き合って、肝心な歌を忘れてた(笑)。よく俺、ここまでやってこれたなと思って感心しますよ。キャラだけでやってきちゃったみたいな。でも、歌をきちんとやり出したら、嫌いなわけじゃないから。年齢的にも良かったのかもしれない。今向き合わないと一生向き合わないだろうし、これ以上いくと、向き合った頃には体が付いていかないだろうし。」
──新しいBRAHMANのスタートと言ってもいいくらい、すごいアルバムだと思います。
「叫んで喉がつぶれて散っていくことを、俺は良しとしてきたんですよ、震災前は。好きなことだけやって野たれ死んだらバランスが取れるんじゃないか、とか思っていたので。でも、震災後はどう考えても、自分がやり出したことは、今日明日だけ考えていれば済むようなことではないので、そのためには今までみたいに投げっぱなしの1日を暮らすんじゃなく、1日フルでやることをやった上で未来を見つめるという、そういうことを考えていかないと自分で逃げちゃうなと思ったんですよ。人間は弱いものだから。だから、敵は自分の中にいたんですよ、今思えば。」
取材:宮本英夫
(OKMusic)
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