2012-10-20
【GOING UNDER GROUND】集合体としてのバンドの魂をアルバムに込めたかった
新生ゴーイングとして発表したアルバム『稲川くん』から約1年7カ月、ついにニューアルバム『Roots&Routes』が届けられる。一度は完成に漕ぎ着けたアルバムをゼロから作り直して完成させた経緯や、その手応えについて松本素生(Vo&Gu)が語ってくれた。
──1年7カ月振りのアルバム『Roots&Routes』は、そのタイトルが全てを物語っていると思うのですが、どんなビジョンが最初にあったのですか?
「1年7カ月振りなんですけど、一回完成しかけたものをボツにして、またゼロから作り始めたんですよ。で、その時に“Roots&Routes”というタイトルを最初に決めたんですね。4月ぐらいかな? 丈さん(ドラムの河野丈洋の愛称)が言い出したんですけど。それは難しいコンセプトを立てるとかじゃなくて、自分たちがどこから来て、どこへ行くのかっていうような前向きなタイトルがいいなってことで。前作の『稲川くん』が4人になって初めてのアルバムだったじゃないですか。で、自分たち的にはスタートが切れた感覚があったし、そういう思いの中でバンドをやっていたんですけど、“まだ俺たちのいいところが出し切れてないな”って思えてきて…すごくいいアルバムなんだけど、一点突破的なところがあるから、“俺たちがやりたいことってそういうものじゃないよな”ってなったんですよ。だから、今回は腰を据えて自分たちが作りたいアルバムを作ろうって。」
──では、“自分たちがどこから来て、どこへ行くのか”ということを考えて曲を作っていたのですか?
「そういうのも、逆になかったですね。こういう思いで曲を作って、こういうタイトルをアルバムに付けて、その通りに売り出す…っていうのは意図できちゃってつまんないんですよ。だから、曲は作っていくんですけど、“この曲を今歌いたい”って思いで作って、“やっぱ違うかも”ってなると外していくっていう作業の繰り返しでしたね。バンドを10年もやっていると曲なんてすぐできるんですよ。良いか悪いかは別として、それっぽいものもできるから、そうじゃないものを作ろうってなって…だから、今回のアルバムは俺たちが作りたかったもの、鳴らしたかったものが、やっとできたと思ってるんです。俺、『稲川くん』っていうアルバムがそういうものだと思ってたんだけど、時間が経つに連れて自分で違うって気付いて。でも、今回のアルバムがそれだった。これはずっと自分の中にあったことなんですけど、バンドっていう集合体で見た時に、まずは俺たち4人のものでありたいっていう。ずっと俺がメインソングライターってところがあったけど、丈さんも素晴らしいソングライターだし、メンバーみんな素晴らしいんだから、みんなでゴーイングっていうものを表現できたらいいのになって思ってたんですね。それが今回やっとできたなって。個人的に一番感触として違ったのは、丈さんの曲を歌う時と自分の曲を歌う時のモチベーションって、やっぱり今までは違ったんですよ。“俺が丈さんの曲を表現する”っていうスタンスだったんですけど、今回はそういうものが一切なかったんです。きっと他のメンバーもそうだと思うんですけど、“これは俺たちの歌だ!”っていうものを初めて感覚として持ったかもしれないですね。」
──メンバーの向いている方向が定まった?
「そうだと思う。やっと4人が同じところを見たっていうか。そうじゃなかったから、完成していたアルバムを一回ボツにしたってのがあるんですよ。“俺の魂が乗ればいい”っていうことではなくて、集合体としてのバンドの魂をアルバムに込めたかったっていうところで1年7カ月かかったっていうのはありますね。そこが一番の違いですね。そういう意味でも、今回は丈さんの歌詞を我がもの顔で歌えるってことが、俺にはデカいんですよ。きっとどこかで気を使っている部分があったんでしょうね。今回って曲も丈さんとほぼ半々で…そういうのも今までなかったんで、それもデカい。こんなにも素晴らしいソングライターが自分と同じことを考えているっていうことで、肩の荷が下りたっていうのもありますね。」
──きっと今まで素生くんの中で“俺がメインソングライターだ”っていう気負いもあったんでしょうね。でも、すぐ隣に素晴らしいソングライターがいたと。
「それを人からも言われていたんですけど、初めて自分で気付いたっていうか、肌で感じましたね。」
──逆に「1+1」とか特にそうだったのですが、丈さんの曲なのに素生くんっぽいと思いましたよ。
「それね、今回結構言われるんですよ。どっちの曲か分からないって。丈さんも余裕がないから、俺に合わせるようなこともしてないし、ゴーイングのテイストも意識してないと思うんです。でも、そうなったっていうのは、さっきも言ったように同じ方向を見ているっていうことなんでしょうね。だから、安心感が全然違う。『稲川くん』の時は俺が引っ張らないといけないと思っていたから、それが曲のテンションとかにも表れて、結構8ビートの速い曲が多かったし、音的にもそれまでのゴーイングよりもマッチョになっていたと思うんですよ。その状態がずっと続くとキツイなって思ってたんで、そこが楽になれたことはデカい。」
──では、まさに今作は今のゴーイングが表れていると。
「うん。一番いいアルバムだと思いますよ。何の迷いもないですからね。今回って“こういう曲があったほうがいい”ってアルバム用に作った曲がないから、一曲一曲に理由があるというか、自分たちの中にドラマがあるし、思い入れも強い。そういうのって歌に出るし、4人でステージに立った時に分かっちゃうと思うんですよね。きっと、ゴーイングを好きな人は、このアルバムが一番好きになるんじゃないですかね。あと、誰にも似ていないものができたっていう自信もあります。何にもカテゴライズされないで、“ゴーイングはこうだよね”って言ってうなずいてもらえるというか、バンドの在り方として“◯◯っぽい”というものがないっていうか。」
──今作で思った“ゴーイングっぽい”っていう部分は曲調うんぬんではなく、サウンドのアプローチとかアンサンブルに思いましたよ。
「そうなんですよ。そこの安心感っていうか、帰って来た感じが共有できるんじゃないかなって思いますね。このアルバムを聴いた時に、俺たちは“帰って来た!”って思えたので。マスタリングが終わったあとに、いつもだったら“お疲れ様でした~”って感じだったけど、メンバー同士で固い握手を交わしましたからね(笑)」
取材:石田博嗣
(OKMusic)
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