2012-09-20

【10-FEET】人生はか弱いけどずっと続いていく

 3年振りのアルバムとなる『thread』。後悔と孤独の中、人生はただただ続いていく。そんな繰り返しの日々に、彼らは何を想い、何を届けたかったのか。このアルバムを聴きながら、その“限られた時間”を見つめてほしい。

─3年振りのアルバムが出来上がりましたね。

KOUICHI「アルバムができたらもともと聴くほうなんですけど、今回はさらに聴いてますね。今までの中で一番聴きやすいと思います。」

NAOKI「すごく自然な流れでできたんですよね。ひとつの期間に集中して録ったわけじゃないんですよ、今回は。何曲か録って、ツアーに行ってっていう繰り返しの中ってこともあったからか、その時その時の自然な状態を詰め込むことができたんじゃないかと思ってて。だから、アルバムが出来上がってから、全体的に聴きやすいとか、意外と日本語の曲が多かったんやとか、なんかそう言われるとそうやな、っていうのが多いんですよ。」

結果、気付いたらこうなってたという感じですか?

NAOKI「そうですね。こういうアルバムを作ろう、こういう曲がないとあかんっていうよりも、その時期その時期でひとつの曲にちゃんと集中して作ることができて、作っていくうちに自然な流れの中から、また違ったタイプの曲ができていったりして。今まで僕らがやっててもおかしくなかったんやろうけど、意外とやってなかったなって曲もあるし、そういう面で言うと、実は新しい部分も出せたんかなっていうところもあるし。自然とそういう方向に体が向いてたんですよね。そういう意味でも、一枚通しての流れがすごく気持ち良いものにできたなっていうのはありますね。」

TAKUMA「曲をたくさん作って、その中からいいものを選んでアルバムに入れるっていう、そういうバランスの取り方を今までは大事にしてきたんですけど、今回は少々偏ってもいいから、とにかくいいものを入れていこう、曲が持ってる熱量をチョイスしていこうっていう傾向があったんですよ。今まではバランスの良さとかバラエティー感とかを大事にしてきて、今回みたいな作り方は避けてきたんやけど、今回は良い曲は良い曲として独り立ちして輝ける力を持ってるっていうことを、ちゃんと判断できたんですよね。すごく大胆やけど、自然な作り方をしたなって思います。」

─すごく研ぎ澄まされたなと思いました。クリアになったというか純度が高いというか。

TAKUMA「激しさはあるけど激しさの質が違うというか、独特なエモさがありますよね。そういうのって好きなんやけど、避けてた部分があった気はします。それがたくさん出てきたら、俺らはそれしか見えんようになって気難しくなってしまうという考えがあって。それは初期からずっと思ってきてて今も変わらないのに、今回そういう音源を作ったということは、そういうジャッジが出されてるということ。ロックしてるロックアルバムが作れたことに対して、3人がちゃんとしたジャッジが出せたんですよ。何の話し合いもないけど、それはすごく前向きで間違ってないんだろうなっていうことに、今すごくドキドキしてる。むちゃむちゃ“届け”と思ってるし、きっと届くとも思ってるけど、届かなくてもそれを悔やむことはないと思う。暗黙の中で、静かに足並みそろえて踏み出せたアルバムですね。」

─例えば、2005年の3rdアルバム『4REST』の時期は振り幅が広くて、それが10-FEETらしさだっていう時期でもあったし、それを一番表現した作品だったと思うんですけど、ここ最近はシンプルでストレートな上で、ちゃんと面白みとか遊び心も含めてますよね。

TAKUMA「そういう意味でのおもろさは上がったかもしれないですね。そのおもろさが完璧になるとこれはこれでまた違うと思う…少しウェイトが上がったというかね。あとは、ちょっとテンポが下がった激しくない曲の表現…極端に言うとゆっくりな曲、そういうものの表現をようやく少し楽しめるようになってきたのかな。」

─それは、苦手っていう意識とはまた違うんですかね。

TAKUMA「苦手とはまた違って、楽しむっていうところまでいけてなかったのかな、今思うと。それをようやく今は楽しめるようになったというか、いろんな楽しみ方を知ったというか。新しいおもちゃをもらった子供みたいな感覚。実はこのおもちゃはこういうこともできるんだよっていう応用を知ったというか。本来の楽しみ方の片鱗を感じながら、できたところがあるんじゃないかと思うんですよ。それができてないと思ったら、きっともっと僕らが得意なものばっかりを並べてただろうし。だけど、どれも背伸びしてやってないと思えたから、こういう作品ができたんだと思いますね。」

─NAOKIさんも言ってましたけど、日本語の歌詞が増えましたよね。それは“届け”っていう想いが強かったからですか?

TAKUMA「“届け”っていう想いが50パーセント、届くわけないっていう想いが50パーセント。僕は、極端なそのふたつをずっと大事にしてきてて、今回もそれは変わらない。大事にしてる分だけ、その曲が求めてる言語は相応しいものが選ばれていくと思うので、気が付けばの結果ですね。音楽ってそうでないと伝われへんなって思ってるところもあるし。全体のバランスを取るためやなくて、その曲に相応しいものを選んで、結果これだっていうところなんでね。」

─では、最後にタイトルに込めた想いを教えてください。

TAKUMA「“1本の線”とか、“ひと筋の光”とか、そういう意味合いがあって、“脈”とか“つながり”っていう意味もある。人生はか弱いけどずっと続いていくし、そこを生き続けていかなくちゃいけないってことを最近よく考えてて、そういう気持ちから“限られた時間を大切に”ってことを歌ってる曲が今回アルバムの中にたくさんあるんですよね。音楽も人生も全部そうやなって思って、この言葉をすごく付けたかった。あと、“ピック・アップ・ザ・スレッド”っていう言葉があって、昔やってたことをもう1回やるとか、ずっと連絡を取ってなかった人ともう1回つながるとか、そういう意味があるんです。自分の人生に周りの人の人生を手繰り寄せようとする、そんな絵面が浮かんで、すごく素晴らしい言葉やなと思って。」

─素敵な言葉だし、素敵なイメージですね。

TAKUMA「そうなんです。“スレッド”って素晴らしいイメージを持った言葉なんですよ。これを付けれて良かったですね。」

取材:藤坂 綾

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