2011-07-20

MERRY、10周年の節目であり、 20周年に行くためのアルバム

MERRY 10周年の節目であり、 20周年に行くためのアルバム


 ついに完成したニューアルバム『Beautiful Freaks』。結成10周年のアニバーサリーイヤーにドロップされるアルバムは、どこを切ってもMERRYが持つコアな世界が堪能できる濃厚な一枚に仕上がっている。そんな作品を完成させたメンバーの想いとは?

──ニューアルバム『Beautiful Freaks』ですが、MERRYが持っているアンダーグラウンド感が前に出ていて、1stアルバムっぽい印象を受けました。

ガラ 新しいことに挑戦しようとかじゃなくて、今のMERRYができる最高のものを作ろうっていう意識でやってたんですよ。自分たちも1stや2ndに近い匂いがすると思ってたんで、そう言っていただいてうれしいですね。

──1stアルバムっぽさだけじゃなく、無駄なものを削ぎ落とした前アルバム『アンダーワールド』を経たことで、バンドサウンドもタフになってますしね。

結生 それぞれの楽曲が持っている“ここだ!”っていうポイントをメンバーみんなが理解して、一曲一曲取り組めたっていうのも大きいですね。

テツ “この曲はイントロでガツンといく!”とか“この曲はサビを聴かせる!”とか言わなくても全員が分かってプレイしていたし、それが結果的に音の奥行きにもつなっがったと思います。

──3枚のシングルが先行リリースされたわけですが、それらを作っている時からアルバムの着地点は見えていたのですか?

結生 7割ぐらいは。残りの3割っていうか、その7割が完成したところで、“さらに、もっと!”という感じで作った曲が何曲かあって、そこでアルバムが締まった感じですね。特に2曲目の「finale」がそうなんですけど。ずっと、その位置にくる曲を探してたんですよ。最初からその位置を目指して作っていたわけじゃないんですけど、「finale」をみんなに聴かせた時に“これなんじゃない?”って言われたんで、“だったら、そこを目指してアレンジしていこう”ってなって。そういう意味では、シングル曲以外は“あの曲がそうくるなら、この曲はもっとこうしないとダメだ”ってどんどんアレンジが変わっていって、原曲とは全然違ってしまったものも多いですね。

──シングルだった「The Cry Against…」も前面に出ていた打ち込みが抑えられた「The Cry Against ME」として収録されていますよね。

結生 この曲は録り直したんですよ。打ち込みも入ってるんですけど、メインをバンドサウンドにして…数回ですけど、ライヴで演奏したんで、それで成長したというか。シングルではああいう感じだったけど、アルバムに入れるんだったら、そうじゃないってなって。

テツ アルバムに入ったことによって、より凶暴になってるじゃないですか。ドラムの加速度と、ヴォーカルの表現が鮮明になってますね。シングルバージョンはシングルバージョンとして聴くのは面白いんですけど、この曲はアルバムの中での毒だなって(笑)。

ガラ 答えを出したかったんですよね。“MERRYとは何か?”ってことで“Beautiful Freaks”…“美しき異端児”だったんだって思い込みたいし、思わせたいし、これからも思っていたいし、そうじゃなきゃいけないし。シングルの時はタイトルが“The Cry Against ...”だったじゃないですか。何に向かって行ってるのかがすごく曖昧だったんですよ。でも、その時からアルバム作りは始まっていたんで、一周してきた時に…最後が“ME”になってるんですけど、これは“My Enemy”の略で、結局は自分自身が敵だったと。自分自身に向かって叫んでいたんですよね。それが俺なりの答えだったんです。“敵は昨日の自分だった”みたいな。だから、感情そのままに歌ってますし、自分で歌って自分に刺さってきますね。


ガラ 今思うと、全部つながっているのかなって。この1年ぐらいの間に自分に起こったことだったり、考えたことだったりを書いているし…あと、“レクイエム”をテーマにしていて、友達やお世話になっていた人たちに向けて“俺たち頑張ってますよ”とか“こんな作品を作りましたよ”って言ってたりもしていて。だから、自分の中のいろんな気持ちを浄化させるっていう意味での“レクイエム”なんですよ。自問自答しているって言われると、そうだなって思うし…すごく歌詞に書いた言葉と自分が会話している。このアルバムが出来上がった時、すごく楽になれたし、気持ちが晴れやかになりましたからね。

──この濃厚なアルバムを締め括るのが、ストリングスが入ったバラード「SWAN」なのですが。

ガラ 今の音楽業界の真逆をいくような、バブリーなレコーディングをしましたよ(笑)。大切になる曲だし、大切にしたいっていう想いがすごく強かったんで、作っている時からストリングスやコーラを入れた方がいいんじゃないかっていう話は出てましたね。

結生 一番時間がかかりましたね。最初からこういう方向性ではなかったんですよ。壮大なバラードにしたらどうかっていうアイデアがメンバーから出てきて、それにすごく共感できたんで、そこからアレンジを繰り返していくうちに、ストリングスやコーラスが必要になってきたので、一番凝ったし、こだわった曲ですね。

──このアルバムを締め括るには、それぐらいの曲じゃないといけなかった?

結生 そうなんですよ。この位置にくるっていうのは、壮大なバラードにするってなった時からあったので。だから、それだけの説得力があるものになったと思いますね。

──歌詞も最後に来ることを意識して?

ガラ そうでもなかったんですけど、この位置にハマる歌詞になりましたね。

──“君の夜が明けてゆく...”という歌詞で終わり、そのままエピーローグ的なSE「-dawn-」つながるので、“夜が明け”で終わるというのが興味深かったです。

ガラ そこから、また頭の賛美歌(SE「-choral-」)に戻って、「finale」へっていう。始めと終わりがつながっているんですよ。

結生 何度も聴いてくださいっていう(笑)。16曲あるんですけど、意外に1時間ぐらいしかないし、長さを感じないと思うんですよね。

ネロ 壮大なものは壮大にしつつ、それ以外はコンパクトっていうのを心がけたしね。

テツ 余韻を楽しめるのは最後の「-dawn-」ぐらいですね(笑)。

──「SWAN」もバラードですけど、突き刺さるものを残して終わりますからね。

ガラ 最後の“君の夜が明けてゆく...”という一行が出てきた時に、自分が言いたいのはこれだけなんだって思いましたからね。この一行が出てきた時に、「SWAN」は完璧なものになったと確信がありましたよ。

結生 アウトロとリンクして、あの一行で情景が見えますからね。

──あと、やはり結成10周年ということも意識としてありました?

結生 少なからず、ありましたね。今までのMERRYを見直したっていう意味でも。

テツ でも、10周年を掲げるっていうことは、それだけの説得力と音質がアルバムにないとバンドとしてダメだと思うんですよ。そういう意味では、試練でした。

結生 うん。16曲ありますけど、MERRYにとって重要な曲ばかりだし。どれもが主役っていうか、一曲一曲に重みがありますね。

健一 昔って“MERRYをシングルで表現することはできない。いっぱい曲が入ったアルバムで初めて表現できる”っていうようなことを言ってたんですけど、このアルバムでは一曲一曲それぞれでMERRYが表現できていると思いますね。一曲の中に喜怒哀楽だったり、いろんな表現が詰まっているし。だから、確かに一曲一曲が重いなって。

テツ 癖が強いですよね。サラッとは聴けないアルバムになったなって。輪廻転生っていうか、何度も生まれ変わるアルバムだと思っていて、最後の「-dawn-」から頭の「-choral-」に戻ってもリピート感がない。全体的なストーリーも完成されているし、この曲順にして正解だなって思ってます。

ネロ MERRYのアルバムってよくスルメだって言われるんですけど、これは最初からいいよって。

結生 後から出てくる味もあるけど、最初からインパクトもあるという(笑)。一回目と二回目とでは聴いた時の印象が変わる曲がほとんだと思うので、何度も聴いてほしいですね。自分で言うのもなんですけど、何回聴いてもグッとくるんですよ。

ガラ 10周年の節目のアルバムですけど、20周年に行くためのアルバムになりましたね。“このアルバムが分かってもらえなかったのなら、もうしょうがない”っていう変な諦めもありますよ(笑)。それだけ満足のいく作品になりましたね。あと、聴くとライヴに行きたくなるアルバムってこういうものなんだろうなって。“ライヴではどうなるんだろう?”って気になるっていうか。

健一 アルバムの曲をライヴでやる時、どの曲も重要なポジションに持っていけるでしょうね。

──そんなアルバムを引っ提げてのツアーも決まっていて、『Beautiful Day』と『Freaks Day』の二本立てという。

ガラ すごく多面性があるし、気持ちを込めて作ったアルバムなんで、一回のツアーでは消化しきれないと思ってるんですよ。いつか必ずあるであろうファイナルに向けての導入として、“Beautiful”と“ Freaks”に分けて、まずは二面性を見せていこうと。何が美しくて、何が異端なのかは、観た人それぞれの解釈があると思うので、そこの観せ方の部分で、どうやって色分けするかっていうのは今から自分たちも楽しみにしてます。

ネロ このアルバムの曲を軸にして、他の曲たちの印象も変わってくるだろうし、今まで以上に何が飛び出すか分からないライヴになると思いますね。

ガラ まずはこの2本のツアーをやって、アルバムを育てていって、その次のツアーにつなげていく…このアルバムがいつ消化できるかは分からないんですけど、それだけのものを作ったと思ってるから、簡単には終わらせたくないんですよね。ちなみに11月に10周年を迎えるにあたって、MERRYならではの企画も考えているんですよ。11月7日がMERRYの初ライヴの日なので、その近辺は空けておくようにって書いておいてください(笑)。

取材:土内 昇

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