2012-10-20

【POLYSICS】テーマは“自由”。それこそが現在のPOLYSICS!

 8月にシングル「Lucky Star」をリリースしたばかりのPOLYSICSが、シングル「Everybody Say No」を完成。タイトなバンドサウンド、ボコーダーヴォイスにピコピコ音。彼ららしさ満点かつ、12月に控えたニューアルバムの伏線となる、重要な一枚だ。


 【“どうなっちゃうんだろ?”みたいな、振り切ったものを出したかった】

──シングル「Everybody Say No」をリリースするPOLYSICSですが、8月に3年振りのシングルを出したと思ったら、わずか2カ月での連続リリース! 12月にアルバム『Weeeeeeeeee!!!』のリリースも決定していますが。今年の夏は毎週末くらいフェスにも出演していて、制作は大変だったんじゃないですか?

ハヤシ「ホント、今年は夏フェスの出演も多くて。同時進行で進めていたんで、ここまで忙しい夏はここ4~5年なかったんじゃないかという感じだったんですけど。ライヴはライヴで、どのフェスも楽しくて。その流れで東京に戻ってレコーディングをやってというのも楽しかったですよ。「Everybody Say No」は「Lucky Star」ができて、すぐ制作に入ったんですよ。もう、曲作りしながら録っちゃった感じだったんですけど。」

──ライヴとスタジオは、上手くスイッチングできるんですか?

ハヤシ「なんかね、結構良い感じでスイッチ入れ替えられて。この夏、いっぱいライヴやったけど、どれも違った楽しみ方ができたし、そのたびリフレッシュできたし。ここ何年かPOLYSICSはそういうやり方でやってるんで、良い感じで進められましたよ。」

フミ「変にスタジオにこもると、行き詰まってく感じもあるんですよね。フェスでライヴ観たり、人に会ったりして、フラットな気分でスタジオに入れるのが逆に良くて。制作もかなり快適に進みました。」

──前作「Lucky Star」は、ハヤシさんとフミさんの本当の意味での共作という感じで、ふたりでPCの前に座って、アイデアを出し合って進めたと話してましたが。「Everybody Say No」もそんなやり方で進めていったのですか?

ハヤシ「いや、今回はもっと3人でセッション的に作った感じです。僕が家でトラックを作ってきて、スタジオでセッションして作っていきました。最初はもっと展開がハッキリしてたんだけど、作っていくうちに“フミのベースリフで引っ張っていく感じがいいんじゃない?”って話になって、そこから全体が見えてきた感じで。そこにヴォーカルを乗せることになった時、“ボコーダーでバシッとやる感じも最近なかったな”と思って、試しにやってみたら“この感じいいね!”って。」

フミ「最初は全編ボコーダーにするっていうのも見えてなかったし、本当に練りつつだったよね。構成も作業しながらかたちにしていって、ある程度バンドサウンドが固まってから、シーケンスを乗っけて、そこからさらに抜き差ししていって。」

──「Lucky Star」でハヤシさんと共作した経験は、何か反映された部分はありました?

フミ「シーケンスの置き方に関してとか、曲によってフレキシブルにいこうって話ができましたね。シーケンスの扱いがフリーになった感覚は、自分の中でありました。」

──「Everybody Say No」では、バンドサウンドとシーケンスのバランス感覚の絶妙さに驚かされたのですが。さらに今作に収録された「ワトソン 2012」、「KI.KA.I.DA! 2012」のリアレンジを聴いたら、そっちはまた別のベクトルで極端に振り切ったものだったりして。「Lucky Star」がまた、現在のPOLYSICSサウンドの枠や振り幅を広げてくれたのかなと思ったのですが。

ハヤシ「それはあるかも。「Lucky Star」から、すぐにアルバムにいくよりは、シングルでまた違ったPOLYSICSの面を見せたいっていうのを意識していましたね。“アルバム、どうなっちゃうんだろう?”みたいな振り切ったものを出したいというのはありました。」

──確かにシングル2枚を聴いた後、“次はどんなアルバムができるのか?”って、まったく想像付かないです(笑)。ヤノさんは「Lucky Star」~「Everybody Say No」と作ってどうでした?

ヤノ「今回は「Lucky Star」と作り方も逆で、バンドサウンドありきなところがあったから、前回よりは制作に携われたかなと思っている次第でございます(笑)。なんかね、今の3人はこういう作り方なんだっていうのは見えた気もしましたね。」

──アルバムを目前にして、自由度はさらに上がった感じはしますよね。過去楽曲の大胆なリアレンジもアリになっちゃったし。「ワトソン」は8thアルバム『KARATE HOUSE』(2007年)の収録曲ですが、だんだんアレンジが変わっていった感じだったのですか?

ハヤシ「いや、3人になってからですね。覚えてるな、コレ。夜中に急にこのアレンジが浮かんで衝動で作って、“こんなのできちゃった”ってみんなにメールしたんですよ。確か、MO’SOME TONEBENDERとのライヴがあるから、楽しい感じよりは尖った感じの夜にしたいなと思って浮かんだのが、このアレンジで。」

──昔の曲をガラッと変えてしまうことに、抵抗や執着はない?

ハヤシ「ないですね。未だにアレンジが浮かべば、バンバン変えてます。それをすることによって今、また演奏できるのであれば、むしろ全然やっていきたいくらいで。昨日も下北沢CLUB Queでライヴがあったんですけど、1stミニアルバム『LO-BITS』に入ってる「BUGTTE RO BO-」って超マニアックな曲をリアレンジしてやったら、“イエ~イ、嬉しい!”みたいな感じで喜んでくれて。」

フミ「「ワトソン」は昔の曲を“これくらい、思い切り変えちゃってもいいよね?”って思わせてくれた曲ですね。それまでは4人時代の曲をリアレンジしようと思ったら、単純に手が足りないからシーケンスの音を足すとか、大枠をあまり崩さない感じだったんですけど。でも、「ワトソン」からはガラッと雰囲気も変えたリアレンジをしていくきっかけになった一曲だったんです。」

ヤノ「昔の「ワトソン」を聴くと遅いし、全然違う曲に聴こえますね。」

ハヤシ「別の曲をレコーディングする気持ちだったよね。この曲はライヴでも評判良くて。どうせレコーディングするなら、アレンジがガラッと変わった曲がいいだろうと思って選んだんですけどね。レコーディングで大きく変わった場所は歌詞を書き足したことくらいで、あとはライヴアレンジまんまです。」

──「KI.KA.I.DA!」は4thアルバム『ENO』(2001年)の収録曲ですね。

ハヤシ「はい。この曲は“ライヴでもまったくやっていない曲を録り直すなら、この曲がやりたいな”と思って選びました。」

──もはや原型をとどめないくらいのハードコアテクノ仕様で、ライヴでやるとしても、どこで使うんだ?って感じですよね。

ハヤシ「確かに。ライヴの最後とかかなぁ?(笑) “やるなら、全然違ったアレンジにしたい”と思った時、ガバみたいな早い四つ打ちが浮かんできて。“よし、Let’s ガバガバだ!”って。」

──ガバガバって、なんか意味が変わってきそうですけど(笑)。

フミ「スタジオで“ちょっとシーケンス作ってみようか?”って軽い気持ちで作り始めたら、“ちょっと歪ませてみようか?”とか“歌入れてみようか?”ってどんどん進んじゃって。」

ハヤシ「“じゃ、ちょっとフミと交互で歌ってみようか?”とか、家で宅録してるような感覚で作ってましたね。“超楽しい!”とか言いながら、3時間くらいで出来上がって(笑)。“でも、やりたい放題やっちゃったから、ちょっと一日置いて、冷静に聴いてみようか?”って、その日はお終いにしたんですけど。次の日聴き直して、何をしたかっていうと、バスドラを足したという(笑)。」

──アハハ、最高じゃないですか! 楽しみながら作ってるのもすげぇ、伝わってきましたよ。


 【今はテーマも決め込まず面白いものを作るのが合ってる】

──そして、「Everybody Say No」の話に戻りますが。ダイレクトには言わず、ボコーダーで“No!”と叫ぶこの曲に、僕はPOLYSICS流のパンクイズムも感じました(笑)。

ハヤシ「気持ち良い言葉を追及していった時、ボコーダーとのハマりが一番良かったワードだったんです。強い言葉なのでメッセージ性もあるのかなと思ってしまうんですけど、それよりは感覚と気持ち良さで選んで、タイトルを付けた感じですね。」

──歌詞は想像する隙がたくさんあって。世間に対してのNo!ともとれるし、自分に対してのNo!ともとれる。BPMは速いけど、疾走感というよりは、胸躍る感じがありますよね。

フミ「曲も歌詞の解釈もみんなの心を気持ち良いところに持っていってもらえれば、それで良いです。」

──じゃあ今回、とにかく歌もアレンジも“気持ち良い”をキーワードに楽曲制作を進めていったんですね。

ハヤシ「そうですね。そこでドラムとベースはガッチリ決まったんだけど、そこからシーケンスと歌を乗っけるところにすごく時間がかかって。最後はこのアレンジで固まったんですけど、それまで8パターンくらい作りましたからね! でも、このパターンがやっぱり程良いバンド感もありながら、電子音と調和する感じがあって、最終的にはみんなが納得するかたちに落ち着いたんです。」

──この曲ができたことで、アルバム全体のイメージみたいなものが見えてきた部分もありました?

ハヤシ「いや、この曲ができた時にはアルバムの曲も結構できていて、なんとなくの雰囲気は見えていたんですよ。この曲ができたあとはアルバム一枚通して、どんな作品にしたいかってところで、足りない曲を作っていった感じだったんですけど。僕は毎回、アルバムを作る時は、作っていくうちのムードでテーマみたいなものを決めていて…例えば、7tnアルバム『Now is the time!』の時は“洋楽ニューウェイブだ!”とか、テーマみたいなものが自然と決まっていたんですが。今回はあんまり、そういうのを決め込まず、本当に作りたい曲を作っていく感じだったんです。昔からずっと作ってた曲を入れたりしてたら、良い意味で統一感がなくて(笑)。その時に自分たちが作りたいと思って、自由に作った曲が集まったので、まだ完成してないですけど、トータルの雰囲気は確実に今までと違うものになるだろうなと思っていて…」

フミ「アルバムの話になっちゃってるけど、いいの?(笑)」

──ま、次への伏線ということで(笑)。なんでしょう? 「Lucky Star」がフミさんとの共作で想像も付かないものになったように、“テーマを決めてもその通りにはならないだろう”みたいな、自分の中でも読めないものになってる感じもあるんですかね?

ハヤシ「うん、まさにそうなってますね。今、曲順を決めているところなんですけど、“曲の自由さ”ってところでも、今までになかった感じがあって。」

フミ「「Everybody Say No」のアレンジが8つもあったっていうのもそうなんですけど、制作をしながらフェスに出演したり、ちょっと制作期間が離れると、“あっちのほうがいいかも…”みたいに考えが変わったりして。今回の制作は、変な決め込みがないところの面白さはすごくあると思いますね。」

ハヤシ「うん、それはあるね。今までは自分の中で“アルバム制作は、テーマを決め込まなきゃいけない”みたいな、ニューウェイブの刷り込みみたいなものがあったんですよ(笑)。今はそれが気にならなくなったし、“これ、面白いよね!”って作ってるほうが、3人のPOLYSICSには合ってるんだなと思って。それは『15thP』以降くらいから、すごく思ってることですね。」

──そう考えるとシングル2枚が、来るべきニューアルバムへの大いなる伏線にはなっている感じがありますね!

ハヤシ「大きい部分でね、なってると思います。アルバムがまた、想像できないような面白い曲もたくさんあるんで。今、その流れをどうするかってところで悩んでいるところです。12月のニューアルバム『Weeeeeeeeee!!!』の完成を楽しみにしていてください。」

──アルバムの完成が待ち遠しいです! では、最後にゆる~い質問で。タイトルの“Everybody Say No”にかけて、“最近、No!と言ったこと、言えなかったこと”を教えてください。

ハヤシ「ハハハ、何だろ? 傘を閉じた状態で、柄の部分じゃなくて、胴体の部分を持って歩く人いるじゃないですか? アレって周りの人に当たって危ないんですよ! そういう人を見かけた時、僕はNo!とは言えないので、わざと傘に当たりにいくんです。そうすると、すみませんって気付いてくれる人がいるんで。」

フミ「私はよくある話だけど、居酒屋さんとかでお刺身を食べる時、醤油の小皿に勝手にわさびを溶かす人がNo!ですね。から揚げに勝手にレモンを絞る人もNo!です!!(笑)」

ヤノ「僕はなんだろ…駅の改札口でタムロしてて、出入りする人の邪魔になってる人たちがNo!かな。でも結局、何も言えなくて、横に立って気付くのを待ってるだけなんですけど…。」

──なんだか、ずいぶん小っちゃい話になっちゃいましたが、そんなところまで含めて、POLYSICSらしいです!(笑)

取材:フジジュン

(OKMusic)


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