2012-09-20

【nano.RIPE】弾き語りからバンド史上初のパンクナンバーも!きみコが、よりリアルにココロの中を歌う!

 シングル「リアルワールド」が好調のnano.RIPEが、待望の2ndフルアルバム『プラスとマイナスのしくみ』をリリース。きみコ(Vo&Gu)の想いを、多彩なサウンドと物語性にあふれた歌詞に乗せた渾身の作品。ツアーなどを経て、より大きく成長した姿を見せてくれている。

──前作『星の夜の脈の音の』から、ほぼ1年振りのアルバムですね。

「前作はインディーズ時代の曲も入れて、それまでのnano.RIPEが集約されたベストのような一枚でした。今回はそれを超えなければ!と、最初は少しプレッシャーを感じていましたね。でも、前作を作って見えたこともあり、メンバーチェンジもあったりして、この1年はすごく濃いものでした。じゃあ、その1年を集約すればいい…そう気付いてからは、気持ちが少し楽になりました。」

──リード曲「ナンバーゼロ」は、人生は何度でもやり直しができると、非常に前向きなメッセージを歌っていますね。

「一番最後に書いた曲です。今一番みんなに見てほしいのは、やはり王道のnano.RIPE…アップテンポのロックで、自問自答を繰り返して、答えはまだないけど進まなきゃいけない気持ちを歌ったもの。そういう曲が欲しいと思って書きました。作曲者のササキジュンが持ってきた時は“エイト”という仮タイトルが付いていて…“エイト”というのは、ラグビーの重要なポジションの名前らしいです。それでツアーの移動中にタイトルをどうするかメンバーに相談して、みんなで考えたのが“ナンバーゼロ”で。歌詞にある《何回だってゼロになる》というフレーズは、タイトルから引っ張ってできました。」

──アルバムタイトルの“プラスとマイナスのしくみ”も後から?

「はい。『ナンバーゼロ』ができて、曲も全部出そろった後に付けました。アルバムの重要な位置を占める『ナンバーゼロ』とリンクしながら、でも直接的にならないようにと考えたんです。考えてみれば、人生も行ったり来たりの繰り返しで、何かを見つけたと思ってもまた後戻りすることもある。それが人生の仕組みなんじゃないかな?と思って付けました。」

──この1年くらい、そういう想いが一番強かったと?

「それは、この1年に限らずずっとですね(笑)。と言うのも、『ぼくなりのおとぎ話』は08~09年に書いた曲で、それを今の曲と並べてもまったく違和感がないし。『アドバルーン』もそうで、これも古い曲だし。きっとこういう想いがあたしのテーマで、死ぬまでずっと行ったり来たりの間でもがいて悩んでを繰り返していくんだろうなと思います。でも結局、“ぼくはぼくでしかない”…これが、このアルバムで一番伝えたかったことです。」

──今回はギターのササキジュンさんの曲が多いですね。

「前回はあたしの曲とちょうど半々、今回は7:3くらい。ベースのアベノブユキも、今回は入ってないけど曲を書くようになって。それで、あたしが作詞に集中できたというのもありました。」

──ジュンさんの曲はアッパーで、きみコさんの曲はアコースティックでしっとりと、キャラクターがはっきりしてきた?

「自然とそうなった感じですけど、それぞれの得意分野が明確になってきた感じはありますね。でも、ふたりが存在感を発揮するのは嬉しいです。アベの曲もカッコ良いものができてきているので、なるべく早いうちにかたちにしてあげたいですね。」

──「サクゴエ」はnano.RIPE初のツービートのパンク調ですね。

「nano.RIPEはパンクバンドじゃないし、完全にイメージなんですが、こういうのはナシだと勝手に思っていたんです。昔はお客さんもライヴでも静かに歌詞を聴いてくれるような感じだったし。でも、最近は盛り上がる雰囲気が多くなって、7月のツアーではモッシュやダイブする子も出てきて。ぼくらもそういうライヴが楽しくて、みんなもこういう曲を求めているんじゃないかと思って。」

──ブランコで遠くに飛ぶ子供の遊びを歌ってますが。

「子供の頃、より柵が遠くにあるブランコを探して、いろんな公園を回ったこともあって。よくケガしていましたよ(笑)」

──ジャズっぽい「ページの中で」もあり、曲調は本当に多彩ですよね。

「『ページの中で』の時は、なぜだか落ち込んでいて。プリプロをする時に改めて歌詞を読んで、暗くて自分でもびっくりしました。希望も何もない歌だけど、これはこれでnano.RIPEらしいとも言えるわけで(笑)。逆に『グッバイ』は、ライヴの時にみんなと笑顔で歌える曲が欲しいと思って作ったもの。nano.RIPEって重たい歌詞が多いので、このくらいライトな感覚の曲もたまにはいいんじゃないかなって。スタッフを総動員してハンドクラップを録ったりとか、レコーディング作業もすごく楽しかったです。『かえりみち』なんかは、曲ができる最初の状態をみんなにも聴いてほしいと思って、歌とギターをクリックなしで一発で録りました。歌とギターだけだからこそ伝わるものが、きっとあると思います。『よすが』はインディーズのアルバム『空飛ぶクツ』の収録曲を今のメンバーでやりました。心の傷を強さに変えたいと歌った、平たく言うと失恋ソングですね。」

──本当に、ライヴで聴きたい曲ばかりですね。

「選曲に迷います(笑)。『ナンバーゼロ』はもちろんだし、『サクゴエ』はどんなふうに盛り上がるか楽しみだし。『ページの中で』みたいな曲もやりたいし。でも、一番楽しみなのは『架空線』かな。」

──“架空線”というタイトルは、電線のことですよね。

「そう。何年か前に工事現場で“架空線注意”という看板を目にして、架空の線って言葉がすごく素敵だなって、ずっと頭に残っていて。歌詞ではステージのこっち側と客席側、CDのこっち側と聴いてくれるみんなの側、その間には目に見えないつながりが絶対にあると信じたいという気持ちを歌っていて。その“つなぐもの=架空の線”ということで、タイトルを付けました。実は『ナンバーゼロ』と、どっちをリード曲にするか迷ったんです。」

──きみコさんの想いが集約された曲で、心に染みる歌でした。

「ありがとうございます。ステージでも“頑張れ”とか“大丈夫!”とか、みんなを励ます言葉はまだ何も言えないあたしだけど、そんなあたしがみんなに唯一かけられる希望の言葉を探しながら書きました。聴いて安心してもらえたら嬉しいです。」

取材:榑林史章

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