2017-12-14
the pillowsがバンドの完全覚醒を示した黄金期の傑作『Please Mr.Lostman』

11月8日から始まったthe pillowsの全国ツアー『RETURN TO THIRD MOVEMENT! Vol.1』が12月13日にフィナーレを迎える。このツアーは1997年発売の5thアルバム『Please Mr.Lostman』と1998年発売 6thアルバム『LITTLE BUSTERS』の2枚のアルバム収録曲全曲で構成される公演で、メンバー自身がバンドの黄金期の作品と認めるアルバムの完全再現とあってチケットは早くからソールドアウト。the pillowsの確固たるキャリアのなせる業である上に、依然衰えないバンドのパワーを見せつけた格好でもある。本コラムではその『Please Mr.Lostman』を取り上げ、本作が黄金期の作品と位置付けられる所以を調べてみた。
■「ストレンジ カメレオン」で 示した決意
キングギドラの『最終兵器』のリリック《言いてぇ事言うのがヒップホップだろ》じゃないが、ロックもやはり言いたいことを言ってこそのロックだと思う。綴られている歌詞が私小説的というか、個人的なもののほうが多くのリスナーの支持を得ることは少なくない。サウンドもそうで、それが所謂時代に沿ったものであるとかないとかは関係なく、そのアーティストが思うままにやったほうがいいようではある。もちろん闇雲に何でもやればいいわけじゃなかろうが、少なくともオンデマンドじゃないもののほうがいい結果を出しているような気がする。代表的なところはUNICORNだろうか。彼らがブレイクしたのは3rdアルバム『服部』。本作はオーケストラによるインスト「ハッタリ」で幕を開け、当時10歳だったという“ペーター”なる子供によって歌われる「ジゴロ」へと続く、冒頭からふざけた印象のあるアルバムではあるが、これが受けたことは事実だし、のちのUNICORNのフリーダムなスタンスを決定付けたとも言える。UNICORN以外で言えば、(その姿勢によってバンドそのものが変わってしまったが)LOUDNESSやRED WARRIORSも自らの嗜好の赴くままに活動することで結果を出したアーティストだろうし、作品毎に指向を変化させてきた(だけじゃなく、メンバーも変更してきた)くるり辺りもそうかもしれない。もうひとつ、忘れてはならない存在がthe pillowsではなかろうか。1989年の結成からしばらくの間、メンバーの脱退やレーベル移籍なども重なって思ったような対外的評価を得られなかった彼らだったが、試行錯誤の末、1990年代半ばから、現在まで続くバンドの基本的スタンスを確立していく。それは、当時のメンバーの発言を借りれば“普段着でいいんだ”というメンタリティーがあったからであり、その姿勢が色濃く反映された作品が1996年に発表した6thシングル「ストレンジ カメレオン」、そして、今回紹介する5thアルバム『Please Mr.Lostman』であった。
まず、『Please Mr.Lostman』の6曲目にも収録されている「ストレンジ カメレオン」の歌詞がすごい(アルバム収録曲はシングル版とは歌詞、アレンジが異なるが、“ORIGINAL STORY”とある通り、アルバム版がオリジンであろう)。やや長めだが、以下に主だったところを引用させていただく。
《君といるのが好きで あとはほとんど嫌いで/まわりの色に馴染まない 出来損ないのカメレオン/優しい歌を唄いたい 拍手は一人分でいいのさ/それは君の事だよ》
《“たぶん もうすぐさ きっと”なんて息を止めたまま/どうでもいい行列に並んでもみた/“終わらないプレリュード奏でて生きてゆくみたいだね”って/僕ら笑う 死んでるように》
《たとえ世界がデタラメで タネも仕掛けもあって/生まれたままの色じゃ もうダメだって気づいても/逆立ちしても変わらない 滅びる覚悟はできてるのさ/僕はStrange Chameleon》
《恐いモノ知らずで 時代ははしゃぎまわり/僕と君のすごした ページは破り去られ/歴史には価値のない 化石の一つになるのさ/君と出会えて良かったな/Bye Bye 僕はStrange Chameleon》
いかがだろうか。《僕ら笑う 死んでるように》とか、《滅びる覚悟はできてるのさ》とか、ネガティブなフレーズが並んでいるので、制作背景をご存知なくとも何か穏やかでないものを感じるだろうし、同時に何かしらの強い決意を汲み取れるのではなかろうか。ここで描かれているのが、前述したthe pillowsの基本的スタンスであろう。
■第三期the pillowsの幕開け
そこまでのthe pillowsの歩みを知ると、「ストレンジ カメレオン」から得られる感慨はもっと立体的になる。ファンならばご存知かもしれないが、彼らのここまでの歴史はその構成や楽曲の傾向から第一期から第四期に分けられる。そもそもthe pillowsはKENZI & THE TRIPSのベーシストであった上田ケンジが同バンドの解散後、山中さわお(Vo&Gu)、佐藤シンイチロウ(Dr)を誘い、そこに真鍋吉明(Gu)が加わることで結成されたバンドなのだが、1991年にメジャーデビューを果たすも1993年にバンドの首謀者であった上田が脱退。スタートこそ順調だったのだろうが、それがスムーズに続いたわけではなかった。ここまでが第一期。そして、以後、山中がリーダーとなって、サウンド面ではソウルやジャズ、ボサノヴァなどを意欲的に取り入れ、タイアップも積極的に行なうなど、バンドは新しいアプローチを模索していった──それが第二期である。のちにメンバーはこの第二期を振り返り、音楽的な引き出しが増えた時期と肯定的に捉えているが、とはいえ、そのバンドとしての新たな試みがセールスに結び付くことはなく、メンバーに大きな失意を与えたともいう。そんな状況下で生まれたのが「ストレンジ カメレオン」である。《勘違いしないでね 別に悲しくはないのさ/抱き合わせなんだろう 孤独と自由はいつも》というフレーズにはある種の諦観があるが、それがシンプルだが力強いバンドサウンドと相まって、それまでのステージの違いというか、バンドとしてランクアップしたことを堂々と見せつけているかのようだ。いい意味での開き直りと言ってもいいかもしれない。ここからがthe pillowsの第三期と言われている(ちなみに第三期は2012年の活動休止まで。2013年の活動再開から現在までが第四期と呼ばれている)。
■バンドサウンドへの完全回帰
そのシングル「ストレンジ カメレオン」を経て制作された5thアルバム『Please Mr.Lostman』は、「ストレンジ カメレオン」で得た確信を気負うことなく、そのまま落とし込んだ作品と言える。M1「STALKER」からしてそれがよく分かる。ラウドでミディアム、オルタナ系のナンバーで、イントロで一旦演奏が止まるような一発録りっぽいラフなテイクだが、その荒々しさがむしろロックらしい。以降、M3「Moon is mine」のヴォーカルでの深めのディレイやM6「ストレンジ カメレオン -ORIGINAL STORY-」のCメロにサイケデリックなサウンドメイキングがあるし、M7「Swanky Street」のアウトロでソウルフルなコーラスワークが聴けたりと、楽曲中にスパイスも散りばめられてはいるが、どの楽曲も基本的にはギター、ベース、ドラムスでのバンドサウンドが強調されている。いや、とは言っても、それは「これでどうだ!」というような、肩ひじ張った強調ではなく、メンバー3人が自然とやったらこうなったというような、いい具合のバランス感覚がある。どの楽曲もいいが、もっとも象徴的なのはタイトルチューンM10「Please Mr.Lostman」だろうか。サビに向かって各人の音が密集していく様子は問答無用にカッコ良いし、the pillowsがバンドであるという当たり前のことをその音で実に雄弁に物語っていると思う。第二期で試行錯誤していたというサウンド面への意識はここで確実に覚醒したと言える。
■現在まで続く活動スタンスの確立
もちろん歌詞もM6「ストレンジ カメレオン -ORIGINAL STORY-」で示した通り、完全覚醒している。
《配られる種で育つ未来/笑い飛ばしたキミを 喜ばせたいけど》《僕の振り回す手が 空に届いて/あの星を盗み出せたら 何か変わるのか》《辿り着いた誰かが 残していった旗に/群がるなんて 下品なしきたりさ/来るべき時が来たら キミの立つ足元も/頂上なんだ それは間違いない》《歩み寄るべきだ なんて思わないだろ?/探してる物は僕らの中で騒いでる》(M2「TRIP DANCER」)。
《いつも/今より似合う場所が/何処かにあるような気がしてる》《あの好きだった映画は 今になって流行りだした/懐かしくて嬉しくて きっと寂しくもなるはずさ》《僕も/時計も少し狂ってる/進んだり遅れたり》(M4「ICE PICK」)。
《誰の記憶にも残らない程/鮮やかに消えてしまうのも悪くない/孤独を理解し始めてる/僕らにふさわしい道を選びたい》《僕らは間違いながら/何度も傷ついたけど/Swing god gun, I need it low demon/Brake なんて踏まない 壊れてもいいんだ》《壊れてもいいんだ Speed を上げてよ/壊れてもいいんだ 僕らが全部憶えてる/壊れてもいいんだ》(M7「Swanky Street」)。
《優しさも痛みも感じない 季節はそっと/Please Mr. Lostman 隠れていよう/Please Mr. Lostman》《年を取って忘れられてく 痩せた枯木に/Please Mr. Lostman 星が咲いていた/Please Mr. Lostman》《捻じ曲がった時代なんて関係ない 僕らは出会った/Please Mr. Lostman それが全てだろう/Please Mr. Lostman》(M10「Please Mr.Lostman」)。
まぁ、“覚醒”なんて言葉を使うと、リスナーを扇動したり、啓蒙したりするような、ある種マッチョな歌詞を書き始めたような印象があるかもしれないが、無論そうではない。周囲への皮肉と自嘲を織り交ぜつつ、自らとそれを取り巻く状況を鼓舞しているものの、どこか刹那的でもあって、決して景気がいいだけの物語ではないことは上記だけでも分かっていただけると思う。この山中さわおが描き出した世界観はthe pillows独自のものであるし、こうしたオリジナルを創造したところにこそ、the pillowsをロックバンドたらしめているものを見出せるのではないかと思う。
失礼を承知で言うが、the pillowsには誰も知っているようなヒット曲はないし、ほぼ毎年行なっているライブツアーにおいても、全国各地のホールやアリーナを埋められるまでの動員があるわけでもない。にもかかわらず、彼らは1989年の結成からここまで25年以上に渡って活動を続け、今年3月にリリースした最新作『NOOK IN THE BRAIN』まで実に21枚ものオリジナルアルバムを発表している。この事実は驚異的ですらあるが、この活動スタンスを継続していることはロックバンドとしてある種理想的とも思える。その現在のthe pillowsの礎は、『Please Mr.Lostman』にあったようである。
TEXT:帆苅智之
アルバム『Please Mr.Lostman』
1997年発表作品
KICS-606/¥3,059(税込)
<収録曲>
1.STALKER
2.TRIP DANCER
3.Moon is mine
4.ICE PICK
5.彼女は今日,
6.ストレンジ カメレオン -ORIGINAL STORY-
7.Swanky Street
8.SUICIDE DIVING
9.GIRLS DON'T CRY
10.Please Mr.Lostman
【関連リンク】
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the pillowsまとめ
SKY-HI、海外公演を含む24箇所25公演のツアーが終幕&2018年開催のホールツアーを発表!
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