2018-01-18
44MAGNUM、衝撃のデビュー作『DANGER』はHR/HMを超えた“ジャパメタ”の歴史的傑作
先週、EARTHSHAKERのデビュー作『EARTHSHAKER』を紹介したが、そうなると、80年代前半に人気、実力ともにそのEARTHSHAKERと双璧を成したこのバンドのことも語らねばなるまい。44MAGNUMだ。LOUDNESSやVOW WOWが扉を開けた和製ヘヴィメタルシーンをさらに押し上げ、所謂“ジャパメタ”ブームをけん引したバンドである。そればかりか、彼らがシーン全体に与えた影響を考えると、日本ロック史における転換点のひとつとも言える存在なのかもしれない。今、聴いてみても、そんなインフルエンサーの片鱗たっぷりのデビュー作『DANGER』から、44MAGNUMの偉大さを考察してみたい。
■楽曲の骨子はHR/HMの基本に忠実
44MAGNUMの1stアルバム『DANGER』は1983年発売。VAN HALENの『1984』、Mötley Crüeの『Shout At The Devil』が発表されたのも同年で、そう考えると当時は世界的にハードロック、ヘヴィメタルが一般層に入り込んできた頃だったとも言えるだろうか。その一方、音楽シーン全体で見てみると、米国ではマイケル・ジャクソン、プリンス、英国ではDuran Duran、Culture Clubらが人気を獲得した時期であって、MTVの隆盛によってさまざまな音楽ジャンルが勃興してきた頃でもあった。こと日本においては松田聖子・中森明菜の全盛期であり、演歌勢もまだまだ強く、歌謡曲中心ではあったが、それゆえにこの頃からクロスオーバーが進んだと見ることもできる。チェッカーズのデビューが1983年、吉川晃司やレベッカのデビューが1984年。歌謡曲とロック、アイドルとロックの本格的な融合はこの辺から始まったと見てもいいと思う。話がズレた。44MAGNUMに戻すと、アルバム『DANGER』にも同様の時代性、多様性、そして、そのクロスオーバーを見出すことができる。
まず、44MAGNUMの音楽性はハードロック、ヘヴィメタルに分類される。この辺は今さら言うことでもないことだろうが、あえて楽曲毎に見てみると、ハードロックの基本に忠実──という言い方が正しいかどうかわからないが、楽曲のスタイルはわりとスタンダードなハードロックであることを、今回、『DANGER』を聴いて再発見した。明確な定義があるわけじゃないが、ハードロックは《かつての標準的なスタイルはブルースやブギーを基調とした激しいロックである。歪んだ音のエレクトリック・ギターを強調したサウンド形態が特徴》とWikipediaにある。M4「YOU LOVE ME DON`T YOU」、M6「DIRTY LADY」はまさにそれに当てはまるだろう。前者はブルース、後者はブギーを、おそらくそれぞれを基調としたと思われる激しいサウンドが聴ける。歪んだ音のエレクトリックギターは全編だが、冒頭のM1「I’M ON FIRE」~M2「YOUR HEART」から飛び出す小気味のいいギターリフはハードロックならではのサウンドを強調しているかのようだ。M9「SATISFACTION」もリフは印象的である。また、M3「THE WILD BEAST」やM5「NO STANDING STILL」での重厚さは文字通りヘヴィメタルと呼ぶに相応しいものであり、ハードロックとヘヴィメタルとは差異を定義するのは難しいということだが、M3やM5のリフのヘヴィさだけで44MAGNUMはヘヴィメタルバンドと認定していいのではと思うほどだ。
■声質そのものに説得力があるヴォーカル
『DANGER』収録曲がスタンダードなハードロックであると表したが、それはブルースやブギー、あるいはR&Rを、歪んだエレキギターで強調したというスタイルにおいてそう言うのであって、その楽曲の全てが標準という意味ではないので誤解のないようにお願いしたい。全体として44MAGNUMは標準どころか、おそらく当時としてはかなり先鋭的なことに挑戦していたと思われる。梅原“PAUL”達也のヴォーカルスタイルがそうかもしれない。『DANGER』では英詞のリフレインも多く、様式美に則した…というか、R&Rらしい歌詞が多いので、その点ではハードロックの基本に忠実と言えるのかもしれないが、ハイトーンにことさら力点を置いている感じはない。ハードコア的なデスヴォイスで迫ることはなく、しっかりとメロディーを抑えている。レンジも広く、声も良く、十分に上手い歌い手であって、声質そのものに説得力があり、要するに、ことさらにヴォーカリゼーションをひけらかしている雰囲気がないのである。この辺はメロディーラインはもちろんのこと、コーラスワーク、さらにはミキシングによる楽曲の中での歌のバランスも関係してのことだろうが、PAULのヴォーカルは悪い意味で聴く人のハードルを高くせず、44MAGNUMを広く認知させた一因だったとは思う。
PAULのヴォーカルに関してはひとつ逸話がある。44MAGNUMが結成後に出演していたLiveHouse Bahamaはそれほど大きなライヴハウスでないばかりか、当時は音響も決していいわけではなく、モニターの状況も良くなくて、かなり大きな声を出さないと自身の声が聴こえないほどだったという。声が潰れることもあったというが、そんな中で繰り返しライヴを行なうことで、自然と声量と抜けの良さが身に付いたようである。
■随所で聴けるHR/HMを超越したギター
最も先鋭的だったと言えるのは、広瀬“JIMMY”さとしのギターであったことは間違いないだろう。前述したリフや間奏で聴かせる速弾きも印象的だし、随所で見せるハンマリングとプリングはJIMMYらしさの特徴であろうが、個人的には音作りとコード使いにその最大の魅力があると思う。M4「YOU LOVE ME DON`T YOU」とM7「BABY,COME TOGETHER」とが分かりやすいだろうか。M4は先の述べた通り、ミディアムテンポのブルース基調のナンバーであって、ややもすると泥臭くなりそうなものだが、一切そうなっていないのは単音弾きのギターにその要因を求めることができるのではないか。特にアウトロ近くのテンションノートのキラキラとした感じは、明らかにそれまでのハードロックとは趣を異にするものであった。M7のニューロマンチック的なギターサウンドは、少なくとも発表された当時は、完全にハードロックのカテゴリーを飛び出したものであっただろう。Bメロ、サビに重なる乾いた感じのアルペジオは、基からメジャー感の強い楽曲をダメ押ししている印象。お洒落という形容は少し違うかもしれないが、少なくとも汗臭さみたいなものとは無縁の世界観を作り上げていたとも思う。
そのJIMMYのギターはのちにさまざまなギタリストに影響を与えている。最大のフォロワーは、師弟関係を公言しているD'ERLANGERのギタリスト、CIPHER(瀧川一郎)だろう。CIPHER、瀧川のワークスにはJIMMYへのオマージュを感じるフレーズや音色が多々あり、リスペクトを隠さない姿勢にアーティストとして真摯な姿勢がうかがえる。
■ビジュアルを含めて後年に与えた影響大
『DANGER』で見せた楽曲面での先鋭さは当時のロックキッズたちの心をとらえ、44MAGNUMは地元・大阪のみならず一気にその名を全国に轟かせたが、サウンドもさることながら、そのビジュアル面でのインパクトの強さも決して忘れることはできない。メンバー全員が金髪。ケバケバしいメイクにカラーコンタクト。ボンテージパンツ、スタッズやアニマル柄のシャツ。画像検索して当時の44MAGNUMの出で立ちをぜひ見てほしいが、かなり派手である。いや、1990年代ビジュアル系黄金期のさまざまなバンドたちを見てきた今となれば、ロックバンドとしては普通くらいと思われる人がいるかもしれないが、長髪のミュージシャンこそいたが、金髪はほぼ皆無。一般人が金髪にしようものなら好奇の目にさらされるどころか、地方によっては○○○扱いを免れなかったような時代である。
また、44MAGNUM以前にもRCサクセションの忌野清志郎も派手な化粧をしていたので、メイク自体が珍しいわけではなかったが、メンバー全員が派手に出で立ちを揃えるバンドは極めて稀だったと記憶している。一説にはメンバー全員が金髪にしたというのはメジャーデビューにあたって大人たちが画策したものとも言われているが、PAULは高校生の時に髪にブリーチして先生に叱られたと述懐しているので、全員が金髪は単に大人の画策に従ったものではなかったようだ。いずれにせよ、見た目のインパクトの強さは44MAGNUMのブレイクに大きく寄与したことは疑いようがない。こうした見た目と、前述したハードロックにとどまらないサウンドメイクが相まって、44MAGNUMを所謂ビジュアル系シーンの始祖と見る向きもあるが、それも概ね間違いではなかろう。
TEXT:帆苅智之
アルバム『DANGER』
1983年発表作品
<収録曲>
1. I’M ON FIRE
2. YOUR HEART
3. THE WILD BEAST
4. YOU LOVE ME DON`T YOU
5. NO STANDING STILL
6. DIRTY LADY
7. BABY,COME TOGETHER
8. AT LAST I`M A FREE MAN
9. SATISFACTION
【関連リンク】
44MAGNUM、衝撃のデビュー作『DANGER』はHR/HMを超えた“ジャパメタ”の歴史的傑作
44MAGNUMまとめ
DIR EN GREY、2018年初の全国ツアーは“真世界”
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