2013-12-20
【それでも世界が続くなら】100か0かじゃなくて、0を1にする話がしたい
アルバム『僕は君に武器を渡したい』でメジャーデビューを果たした“それせか”がわずか4カ月でミニアルバムをリリース。メジャーデビュー後の心境と今作について篠塚将行(Vo&Gu)に訊いた。
──前作のアルバム『僕は君に武器を渡したい』はメジャーデビュー作品ということで、今までの集大成のようなところもあったと思うのですが、今改めて振り返ってどのような作品になったと思いますか?
「個人的には、“アルバムを作る”っていうイメージは全然なかったし、今でもないんです。どちらかと言えば“何を歌うか”が大事だと思っていて。集大成と言えば集大成なんですが、音楽に限らず、次もその次もずっと今やっていることが人生の集大成でいたいと思ってます。なので、僕にとって全ての過去の曲は過去の自分自身そのものというか、越えないといけない壁みたいなものです。ついでに言えば友達と一緒に作ったので記念じゃないという人もいるけど、写真のアルバムと同じというか、僕はそういう意味では自分たちの歴史の記念でいいと思っている部分もあるので、将来“あぁ、こいつらと一緒にこんなこと本気で考えてて、こんなこと言ってたよな”って思えたらいいなとも思ってます。」
──メジャーデビュー後、意識の変化などはありましたか?
「意識は変わったと思います。っていうかメジャーデビューしてみて思うんですが、これ、多分変わるほうがいいですね、きっと。僕はデビューする直前まで、努めて“変わらないでいよう”みたいに思ってたんです。メジャーデビューしたり、そんなことで態度が変わる人が、すごく不誠実に思えたから。でも、“メジャーだからって変わらないでいよう”とすること自体が、すでにメジャーを意識してるってことにすぐに気付いて。じゃあ、もうメジャーがどうとか考えず、“どうせこんなメジャーデビューなんてそのうちいつか終わるんだし、なら、今できる精一杯をやろう”って思ったら、普通に環境が違うから変わるんですよね。だったら、変わってしまうんじゃなくて、自分から変わろうと。そうしたら、変わりたくないところは変わらないように自分で意識できる。守れるかどうかじゃなくて、守ろうとする姿勢に重きを置くほうが、僕はいいと思うんです。誠実でいたいっていうより、不誠実になりたくない、不誠実になるなら終わっていい、っていう部分は以前より逆に強いですし。じゃあ、メジャーになりたくてもなれない人がいて、そんな中で僕らみたいなのが歌えるなら、規模はそりゃ小さいだろうけど、何を残そうか、って考えるようになりました。こんなだせーヤツらだってメジャーデビューしてんだから生きてみようかなとか、そういうんでもいいんです。“何を残せるか”というか。否定はしないけど、売れるとか売れないとかそういうのはやりたい人に任せて、僕は中身の話をしたいんですよね。僕にとっては音楽は手紙みたいなもんですし。僕はアマチュアイズムみたいなものをずっと持っていたいと思っていて…なんて言うか、偉そうな人になりたくないんです。だって、みんな同じ人間だから。友達に手紙書くみたいに、ちゃんと自分じゃなくて相手のことを考えながら、誠実に書いていたいです。」
──その後、ツアーを行なったことでバンドとしての変化などは?
「いや、もうライヴは口だけ野郎にならないようにもっと練習しよう、ってみんなで話してましたよ。演奏って、努力も仲の良さも悪さも口だけなのかも絶対分かるじゃないですか。上辺で繕っても。だから、なんて言うか、伝わる伝わらないよりも事実として真剣かどうか、みたいな感じでみんな必死でしたね。でも、移動中は楽しかったです。みんなはしゃいでたんで。」
──今作『明日は君に会いに行くから』は、最初はミニアルバムではなくシングルを制作していたとのことですが。
「シングル出そうよって言われて、でもシングルとかよく分からないから、とにかくいつも通り精一杯思っていることを歌にしようと思って。そしたらいろいろな人と話しているうちに、僕自身も気が付かないうちに曲をたくさん書いてて。話し合いになって、どの曲入れる?ってなって、みんなこっちがいいあっちがいいってなって。でも全員が納得しないとやりたくないって言ってて。事務所の社長も“じゃあもう、納得できないもの出しても本質から逸れちゃうから、出すのやめちゃう?”みたいな話も会議でしてて。ここにいる全員がいいと思うかたちじゃないとアルバムがどうとか以前に人として嫌じゃん、って僕も思って。で、全部入れちゃおう、明日からすぐスタジオ入って明後日レコーディングするか、みたいな話になって最終的にミニアルバムになったという感じです。すいません、こういう説明が下手で。」
──それでも世界が続くならの作品はひとつのコンセプトに対して楽曲を作り上げていくのではなく、日常で思ったことをまとめたもの、という印象が強いです。そんな中で、この6曲を収録した理由は?
「実際、メモとして曲を書いているというか、手紙みたいなイメージなのでいろいろ思うことがあったからいろいろ曲を書いたんだと思います。あと、僕はこんなに歌うのが怖いのに…結局歌いたいからなんでしょうね、歌うのなんて。曲は、もう、曲ごとにそれぞれです。でも、全部1stアルバムに入ってる曲のあとに書いた曲ですね。」
──1曲目「5分後のアンチテーゼ」は“くだらねえ”と嘆くだけではなく、核心を突いてくるところがそれせからしいですね。
「もう、あの時は“メジャーデビューとかロックバンドとか全部くだらねえな”と思っちゃいまして。それと、僕が1年くらいバイトも音楽も何もしてない…というか、人に会ってない時期があって。その時は携帯電話も持ってないんで、もう今あの夕焼けは朝焼けなのか何なのか、朝なのか夜なのかも分からない、なんか自分がもう存在してないような気分というか。なぜかデビューアルバムを作る直前くらいにあの感じを思い出してしまって。“そんなもんより、俺やお前の今のほうが大事だろう”と。あの感覚を壊そうと思ってコンビニの帰りに小声で本気で歌ってたらできました。」
──なるほど。「君の嫌いな世界」は“音楽にするときれいだな”と歌うのがとても印象的でした。音楽だからこそ言える、伝えられることなどはありますか?
「音楽も手紙も小説もある意味では違うけど、ある意味で芸術って一方的じゃないですか。ちょっと怖くないんですよね、言いたいこと言うのが。例えば、音楽を作品だと言う人がいて、僕とは違うんだけどそうな人もいるし、その文化もいいと思うんです。ただ、そこに“君の音楽と僕の音楽って、同じ意味だよね?”っていう先入観があると、会話が通じなくなる。なんなら、自分の価値観と違うものを見つけると“それはおかしい”って修正しようとしてくる。だからってそう思ってる人にこっちがカウンターしても意味ないし、もうそれはそういうものでいいや、と思うんです。思うんですけど、嫌なんです。お互いの違いを違うまま認め合えたら、くだらない言い合いも宗教戦争もしなくていいのに。音楽にしても、どうせ綺麗にはならないんだと思います。ただ汚いことを汚い気持ちで上辺だけ綺麗にして歌う人の歌を綺麗だと思ってしまう人がいるだけで。僕は僕が不愉快だった歌を歌うことで、“君に無理矢理、僕のこと好きになれなんて思ってないよ”“お前のこと騙さないよ、信じてよ”って言いたかったのかな、と今なら思います。音楽をただ純粋に好きだったことが僕もあるから、こういう音楽を信じられなくなった時代に、僕の友達とか、僕の歌を好きだとか言ってくれる奇特な人が、また音楽を信じられるような歌を残せたらなと思うんです。」
──「成長痛」はライヴでも披露していましたが、“変われないんじゃなく、成長痛が怖い”というメッセージがとても心に残りました。篠塚さんご自身でリード曲に選んだということですが、今言いたいことがこの曲に詰まっているということなのでしょうか?
「僕も変わるのであんまりはっきりと言えないけど、数日前まではそうです。さっきも言ったけど、手紙と同じでどんなにやさしい気持ちで書いても受け取った人が嫌な気持ちになったら、それはその人にとっては嫌なものですよね。僕にとってはどういう曲かは大事じゃない。聴いてもらいたいのも僕ですし、自分の言葉が伝わらないならそれは僕のせいです。好きでも嫌いでも興味ないでもなんでもいい、受け取る方は好きに受け取っていい。受け取ってくれたこと自体がもう嬉しいんです。だったら、全ての音楽の意味は聴いた人次第です。僕はただ、今聴いてほしいと思ったから、歌っただけです。簡単な理由ですいません。」
──他にも「消えた星の行方」「蝶と少女の関係」「平行線」など、悲観的な日常に対して鋭く切り込み、しかしどこかやさしいのもこのバンドの魅力だと思います。
「思ったことを書いてます。僕は、不器用というか顔に出るんでしょうね。僕がを嘘つくとすぐ分かる、“お前の照れ隠しが見ててムカつく”ってライヴハウスの店長さんたちに言われ続けてきたんです。だったら、本当に思ってることとか言いたいことを歌わないと、すぐバレるってことですよね。“自分がいいと思う曲が書きたかったら、自分がいいと思う人間になれよ”ってずっと思ってきました。だから、やさしいって言われると恥ずかしいです。ありがとうございます。これからも好かれすぎないよう頑張ります。」
──そんなアルバムに名付けられた“明日は君に会いに行くから”というタイトルは?
「“今日は会いに行けないけど”って意味です。ただ、未来の話はしなくていいけど、でも明日の話だけはしようよと。今日が死にたいくらい最低なら、仮に本当に死んでしまうなら、だったらその前に明日好きなヤツに会いに行けよ、って思うんです。で、今日よりマシな明日になった時、そのマシになったあとに明日また考えればいいじゃん、と僕は思うんです。ビフォアーの時にアフターを考えるんじゃなくてビフォアーの時にビフォアーを考えたい。僕は友達とするなら、100か0かじゃなくて、0を1にする話がしたいんです。」
──なるほど。出来上がってみてどのような一枚になりましたか?
「僕が言いたいこと言って、僕の数少ない友達と好きな先輩と精一杯音楽やると、こういう感じになるんだな、と。」
──中でも思い入れのある楽曲はありますか?
「全部です。全部恥ずかしいからです。」
──(笑)。最後にひと言お願いします。
「聴いてくれて本当にありがとう。でも、もう聴いてくれた時点で君のものっていうか、返さなくていいから。それあげるから。音楽なんてどうせ娯楽だから、カラスよけでもなんでも、君の人生が少しマシになるために好きに使ってくれ。いつかどっかで会おう。いつも本当にありがとう。」
取材:高良美咲
(OKMusic)
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