2014-05-05

それでも世界が続くなら、4曲入りアルバムのようなシングル

 デビューからフルアルバム、ミニアルバムと短期間でリリースをしてきた、それでも世界が続くならの最新作は初のシングル。今作について篠塚将行(Vo&Gu)に語ってもらった。


──現在、1月にリリースしたミニアルバム『明日は君に会いに行くから』のリリースツアー中ですが、実際に各地を回ってどのような反響を受けていますか?

正直、必死すぎて反響を気にしながらライヴができないので分かりません。でも、ライヴは本気でやってると思います。命賭けと言えば大袈裟だけど、でも人生の中の有限な時間を音楽に全部突っ込んでいる最中なので、僕としては“僕自身”って呼んでいいくらい、今僕が出せる全部で音楽をやってると思います。

──『明日は君に会いに行くから』は今改めて振り返って、どのような作品になったと思いますか?

ピカソが“自分が誇れる作品を作ることよりも、自分の生涯の全ての絵を通して、自分が何者なのかを残すことのほうがはるかに意味がある”って言ってたそうですが、良くも悪くも、意図も無意識も全部含めて、その時のことが全部残ったなと思います。そんなことを思って作ってるので、普段CDとかを“作って良かった”なんてことは思わないんですが、そういう意味では作って良かったと思ってます。人生の中で、こういう時期があったんだなと思える6曲です。

──今回リリースされるシングル「僕らのミュージック」ですが、前作『明日は君に会いに行くから』は最初シングルの予定だったものがミニアルバムになったということでしたよね。

むしろ、「僕らのミュージック」みたいな曲が書けなかったから、あの時は結果的にミニアルバムにするしかなかったんです。だから“今日は会いに行けないけど、明日は君に会いに行くから、待ってて”っていうミニアルバムになったので。「僕らのミュージック」ができた時は、ごく自然に作ってたので、自分としてはいつも通りだと思ったんですが、周りの人が“この曲いいね”って言ってくれたので、じゃあシングルでいいのかなと。シングルは初めてなので、よく分かってないのかもしれません。でも、先に聴いた大人の人たちから、“変わったね”“変わってないね”“垢ぬけたね”“相変わらずだね”と言われたりしてて…。“あぁ、やっぱり音楽って聴いた人が決めるもので、それはひとりひとりの人生とか価値観で聴こえ方が違うんだな”と。

──確かに。そういう気持ちがあるのは自分だけではないんだなと、「不燃ごみの日」にも共感しました。

この曲を作った頃は、“正しいこと”なんてある意味では存在なんかしないけど、でもある意味では誰の言ってることも正しいじゃないですか。なんなら、それを現代社会に生きるみんなが気付き始めてる。だから、自分の論理や価値観を主張し合いまくる。そういう側面もあるこういう社会生活が、もう辛かったというか。全員正しいから口論になるくらい主張するけど、全員正しいからゴールがなくて、ただお互いを嫌いになる。で、それを“表に出さない自分はいいやつ”みたいな顔で心に隠してつまんない冷戦になる。そういうの、誰に言ったらいいのかも、どこに捨てたらいいのかも分からないから、とりあえず曲にして残しておこうと思ったんです。

──収録曲は、そうやって書き残しておいた楽曲の中から選曲されたのですか?

そうです。特に、「エスと自覚症状」はマネージャーはシングルにしたかったみたいです。曲を作っている当の僕はいろんな意味でも選ばれる立場なので、もう、どの曲でもいいから“シングルにしようぜ”ってみんなが言う曲があればいいなと願うばかりでした。それくらい、僕は意図的に“シングル曲というものを書かないようにしよう”っていう努力をしました。いつも通りに、自分の今思ってることを、媚びずに、恥ずかしげもなく、ただ思いっきり曲にしました。

──「エスと自覚症状」は《誰にでも好かれる音楽なんてのは あるはずもない》というフレーズが印象的でした。

僕にとっては“誰にでも好かれる音楽なんかない”っていうのは諦めでも攻撃でもなく、ただの事実だと思ってるんです。できるだけ、事実だけを曲にして残していけたらと思ってるんですが、器用じゃないから自分の意思もそこにたくさん入っちゃうんです。すいません、余談でした。僕にとってはすごく当たり前のことを歌ってる歌で、でもきっと僕の当たり前は誰かの当たり前ではない。だから、曲にして残しておこうと思いました。

──鋭さのある歌詞の「片方だけの靴」は、《まるで片方だけの靴だね》と締め括っていますが、どういう思いから書いた曲なのですか?

なんか、いつも靴下片っぽ失くしちゃうんですよ。それが嫌で靴下が嫌いなんですけど、そういう感じというか、なんにおいても“片方じゃ意味のないもの”ってたくさんあると僕は思ってて。例えば、音楽もそうですよね。聴く人がいて、作る人がいて、両方いて、初めて音楽になるんです。自殺してしまった友人も、自分の意見が通らなくてキレてる誰かさんも、僕にとっては全然違うけど、ある意味で僕ら全員片方の靴みたいだなと思ったんです。死にたいのは全然分からなくもないし、それでも生きててほしいって思っちゃう俺の話も聞いてよ、音楽みたいに。って言いたいだけの僕のくだらないメモ曲です。

──今作は初のシングルでしたが、何か今までの作品との違いはありましたか?

僕にはシングルとアルバムの違いがありませんでした。次に作ったらどう思うのか分からないけど。4曲のアルバムみたいだなと僕は思います。

──改めて、“それでも世界が続くなら”とはどのようなバンドだと思いますか?

すごい質問ですね。こういう質問を考えてくれて、なんか嬉しいです。ありがとうございます。僕が決めることじゃないと思うけど、でも今の僕が思う“それでも世界が続くなら”っていうバンドは、友達少ないやつらが、その少ない友達4人で集まって、暇だし一緒にバンドでもやるかってバンドをやってるだけの、なんて言うか…友達です。主張も主義も何もないです。言いたいこと言って、やりたいことやって、誰かに好かれるわけでもない。このバンドは、そういう“よくある話”です。

──なるほど。今作を引っ提げて、6月28日の下北沢GARDENまで初のワンマンツアーが行なわれますね。

楽しませる自信も余裕も人格もないので、とりあえず全力でやります。自分の人生の1日を、わざわざ僕らと一緒にいることを選んでくれた人たちに、感謝してるから、それだけは約束したいです。っていうか、約束できるのはそれだけです。

──楽しみにしています。リスナーの方々にメッセージがあればお願いします。

聴いてくれて、ほんとにありがとう。音楽は作ったやつのためにあるんじゃなくて、聴いたお前のためにあるんだから、俺らの音楽だとか誰かの音楽だとか、っていうか音楽とか関係なく、できることなら、1mmでいいから昨日より笑って生きててください。今度どっかで会ったらジュースくらいはおごるよ。ありがとう。

取材:高良美咲

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